王妃は執務室に戻ると、書類の確認と確認済みの王印とサインをひたすら進めていくのが王妃の日課だった。
 確認した書類の山が三つに分かれた書類の一つの山、差し戻し・・・・
 却下の書類の山を掴むと、執務室を出ていく。

 王妃が廊下を進むと、皆一様に壁に下り道を開けると頭をたれる。

 雪華でなく、王妃と言う役職に対して頭を下げていると言う事実を気づいていないわけではない。

 とはいえ、
 雪華自身が剣術家として、弱者でなく強者なのだ。
 王妃の苛立ちは、周囲に重圧を与える鬼王としての覇気の資質が充分にあるという事実を王妃は気づいていない。

 目的の部屋に辿り着くと、
 ノックをせずにドアを開ける。
 一斉に頭を垂れ、王妃の言葉を待つ側室管理に経理部職員。
 王妃の赦しのなしに、王妃に声をかけてはいけないわけではないのだが、
 言葉の足らない王妃は周囲に誤解され、腫れ物扱いを受けていた。

 掴んだ書類をたたきつけ
 
「却下」

 王妃は一言もうしつけると、踵を返すと部屋を去っていく。
 王妃は、廊下の窓の外に目を向ける。
 赤い夕日が沈む。
 連日の執務室での激務を思い出し一気に疲れを感じる。

 食事の前に風呂でも入ろうと、踵を返して城内必須いの秘湯へと足を向けていた。