王妃は閉じていた目を開ける、
 
 仮面の隙間から注がれる黄金の眼は、宙を捉えて、
 王妃の椅子から立ち上がると、歩き出す。

 むやみ肌を出さないスタイルの漆黒のドレスを好み着用していた。
 龍王への嫌がらせも含めて、漆黒のドレスを見に纏う。
 訓練を怠らない引き締まった筋肉を王妃は、漆黒のドレスで覆い隠す。



 王妃の名前は、

 雪華  セツカ

 王に苗字はない。

 

 この名は何年も呼ばれることはなく、

 王妃、
 龍妃、

 としかここ何十年、役職名でしか呼ばれていない。
 王も王妃の名前を覚えているのかも定かでない。


 そもそも、

 この結婚に愛などないのだ、


 雪華も夫である龍王を、愛してすらいない。

 書面上の夫であり、

 永久国の元老院より、求められた婚姻の延長にある龍王持ちの御子を産むという思惑だけは、叶えてやるつもりもない。


 王妃
 雪華は、バルコニーのカーテンを開け、外の風に当たる為扉をを開け放ち外に出ると手すり歩みよる。

 城下町の、その先は大きな港町。海風が、雪華の黒髪を靡かせ、

 眼下に目を滑らせると、
 雪華の黄金の瞳が煌めき剣呑な光を灯し、

 忌々しげに侮蔑の目を向け、舌打ちをする。