王妃は物音で目を覚ます。
 昨夜は色々ありすぎて、頭痛しかない。
 連日の事務仕事と、謁見処理で疲労が溜まっていた。
 つい、久しぶりの温泉にうとうとと寝てしまい茹って動けなくなった所を龍王に助けられて、
 よくわからぬ告白を受けて、

 苦いものを飲まされた。
 
 夫婦の営みとは、不味いものなのだな。
 私には向いていないと結論づけ、

 何処かリフォーム入る予定あっただろうかと、首を傾げながら起き上がると背伸びをする。
 洗面所に移動し、
 井戸のポンプを稼働させ自ら水を汲み上げタライに水を放り込むと洗顔する
 顔を上げた王妃の瞳はいつもの黄金色に戻っている。
 目の色彩を変える魔法の点眼は8時間、目に水が入れば、効果が消える。
 一応、夢であって欲しいと胸元を確認するとバッチリ右胸に生々しい歯型が存在する。

 げんなりしつつ、しばらくメイドの扮装はしないと硬く誓うと寝所に戻りクローゼットをあけ驚愕することになる。

 服が1着もない。
 昨夜脱ぎ捨てた温泉に戻って、あいつがいても不味い。
 回収には行かなければならないが、
 いかんせん、寝巻しかない。


 思ったよりがたごととの寝室の外の物音に、
 王妃は顔半分を覆い隠すいつもの面を着けると、扉を開く。

 メイド達がワラワラと、荷物を運んでいる。
 
 引越し作業を仕切っている現龍王の乳母をしていたメイド長は、王妃に歩み寄り箱を王妃に渡しながら、
 「本日から、当龍宮は回収工事に入ります。
 つきましては、龍王様からの贈り物です。
 おめでとう御座います。
 龍宮回収工事終了の際には、王妃さの処女開通の儀を行うとの達しでございます。」
 メイド長のビバ孫に期待に満ちために、心を痛みつつ、
「工事の件も、初夜の件も初耳なのだが、」
 王妃は心底困惑しているのだと、眉を顰め苦情を訴える。
 が、

「イタズラがお好きなお子様だったので、
 きっと王妃様を驚かせてサプライズしたかったのでしょう。
 龍宮が改装工事完成するまで、
 しばらくは執務室の隣にある仮眠室にて、お二人でお住まいになりたいとのお達しです。
 春ですね♪
 どうか龍王様をお願い致します。
 やればできる子なんです!」
 王妃はメイド長が苦手だ。
 龍王は仕事をしている姿を見たことないし、
 人間的に嫌いな龍王を、信じている信奉者のメイド長を居たたまれない気持ちになる。
 いつものように、曖昧に頷く。

 とりあえず寝室に戻るなり、箱を開けると中身を確認すると贈り物を壁にぶち投げていた。