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 王妃は微睡の中、うっすら目を開け紫紺の瞳が何かを捉える。
 蜜色のカーテンが視界に揺れて、
 視線を他へ彷徨わせると向けると、緋色の瞳に囚われる。

 龍王が、何故か頬杖をついて隣に寝ている。
 王妃は、ガバッと起き上がると裸である事に気づきかけ布団をかき寄せて龍王から距離を取ろうと試みる。

 が、龍王に阻止され腕を掴まれ、引き寄せられると龍王に組み敷かれていた。
 龍王は恭しく王妃のメイドの手の甲に口付けを落とすと、

「王妃のメイドだからと遠慮はいらぬ。
 私の寵姫になって下さい」

 真剣な眼差しで、口説く龍王。
 その間も掴まれたて手を振り解こうともがきつつ、
 はたと、龍王の言葉じりに、まだ王妃だとはバレていない事実に気づき、

「そもそも、王妃様を裏切るなんてできません!」
「大丈夫、王妃は俺に興味がない。」
「それは、王妃様と龍王様の問題です。
 なので、私の諦めて下さい」

 ギリギリと両腕を掴まれ組み敷かれながらも、鬼族の腕力で応戦する自称王妃付きのメイド。

「100年、
 そなたが王妃と共に、この龍宮にきてから、
 ずっと、そなた湯浴み姿を見つめてきたのだ。
 100年間、恋焦がれて来たのだ。
 今日、君が湯に浸かったまま、倒れているのを見て、
 もう我慢できなくて、
 君に触れてしまったら、もう後戻りはできない。
 私の寵妃になってくれ」

 いつになく、龍王の真剣な緋色の瞳に囚われる。
 今の言葉に嘘偽りは無いのだろうが、
 私は、メイドではなく、王妃なのだ。

 龍王の言葉に、どう答えるべきなのか言葉が詰まる。