「兄上、お帰りなさい!」
「どうだった!?王女さまどうだった!!??」
「あなたたち、ちょっとは落ち着きなさい!で、どうだったのユーリ!?」
「ほら、お前も落ち着いて。で、首尾はどうだいユーリ……!?」
エルフリーデ王女殿下こと依子をバーデン王都に送り届けて、すぐ領地に帰ってきた。国王陛下は王城に滞在していくよう勧めてくれたけど、まだまだ事後処理が残ってると伝え丁寧に辞退した。一日も早く依子と一緒に暮らすために、やるべきことはまだまだ残っている。それに、どうせ客室に滞在したところで依子とイチャつけるわけでもない。
「ローヴ、留守中に変わったことはなかったか?ここ数日分の報告書は部屋に回しておいてくれ。リーリエ、王女様はとても可愛らしい方だったよ。後でゆっくりお話してあげる。父上、母上、今から少し時間をください。首尾は上々ですので、今後のことについて話し合いましょう」
「おぉ……!よくやった!よくやったぞユーリ!!」
「やったぁ!王女様がうちにくるのね?歓迎のパーティをしなくちゃだわ!!」
「……まじですか兄上。前世云々の話は妄言じゃなかったんですね」
「ユーリならやってくれると信じていたわ。これでバウス辺境伯家の跡継ぎは貴方に決まりね!」
弟妹と両親が大騒ぎしている隙に自室に戻り、この二日間の出来事に想いを馳せた。
しかし弟よ、妄言とは言ってくれたな。向こう一週間は厳しくしてやる。
「あー……連れて帰りたかった」
よく依子の手を離せたと、己の自制心を褒めてやりたい。このまま辺境伯領に連れて行こうかと道中何度も思ったけど、ここで国王陛下の不興を買ったら今までの苦労が水の泡だ。最終的にはどんな手を使ってでも依子を手に入れると決めていたけど、彼女にとって一番望ましい形でそうなるのがベストだと思っていたので、今日まで耐えてきた。
(俺はエルフリーデ王女殿下のデビュタントの日に一目見て依子だってわかったのに、アイツときたら……薄情ものめ)
けど、よくよく考えたら依子は興味がないものはまったく視界に入れないところがある。
そんな依子が別々の高校に進学してからも俺の事を気にしていると知った時から、絶対に依子と付き合って結婚すると決めていた。自分の想いは一方通行じゃないんだとわかって、物凄く嬉しかった。依子が俺をゆいくんと呼んだあの日からずっと、俺の一番は依子なのだ。
「これでよーやく結婚出来る……はぁ、長かった!」
まだ唯人だった頃、結婚間際で事故に遭い、古屋依子と秋月唯人のまま死んでしまった。依子は『銀行とかの名義変更で必要になるから』と早々に秋月姓のハンコを用意してたけど、結局使わずじまいだった。俺はどうしても依子と結婚したくて、唯人の記憶を持ったままユーリに生まれ変わった。だからこそこの世界のどこかに依子の記憶を持った女性がいると信じ続けて、エルフリーデ殿下のデビュタントの夜会で彼女を見付けたときは歓喜した。
「さて、と。一番邪魔だったアルベール公国は片付けたし、あとはトルネオ王国の第二王子を黙らせとくか。それから国内の有力貴族で王女の降嫁狙いの家をリストアップしておこう」
エルフリーデ殿下のデビュタントの翌日、すぐさま両親を説得し王家に婚約の打診をした。国防の要たるバウス辺境伯家の嫡男と第三王女だったら悪くない組み合わせだし、跡継ぎになるため文武両道たれと厳しく育てられてきた上に、幼い頃から前世の記憶があったおかげで同年代の男子より優れている自負があったため、当然自分が選ばれると思っていた。何より依子なら何の迷いもなく自分を選ぶと信じて疑わなかった。その結果、アルベール公国の世継ぎに競り負けてまんまと婚約者の座を持っていかれてしまったので、何事にも油断は禁物だと手痛く学んだ。
『俺には前世の記憶があります。前世、こことは異なる世界でエルフリーデ王女殿下と婚約していて、結婚する直前に事故で死んだので彼女に未練があります。彼女以外と結婚するつもりはないので、俺を跡継ぎから外してください』
家族の前でそう宣言したら、大騒ぎになった。自慢の息子が厳しく育て過ぎたせいでおかしなことを言いだしたと父は嘆き、真実ならロマンティックだけど妄想だったらかなりヤバいのでどのみち後は継がせられないと案外母は冷静で、跡継ぎは兄がなるものだと思い補佐をするため育てられてきた弟は「今更俺が跡継ぎになるかもだなんて冗談じゃない!無理!!」と逃亡しかけたのでとっ捕まえて直々に跡継ぎ教育を施した。次期辺境伯の座を放り出す気はなかったが、最重要事項は依子と結婚することなので、場合によってはやむなしだと考えていた。なお幼いリーリエはすんなり受け入れてくれて、王女様が未来のお義姉さまになったらステキねとはしゃいでいた。可愛い妹だ。
俺の本気を感じ取った家族たちは、どうにかしてエルフリーデ王女殿下とアルベール公太子の婚約を解消させ、王女殿下を長男の嫁にもらう手段はないかと考え始めた。一家で話し合い、公国に間諜を忍ばせ周辺諸国からも情報を集め内情を探ったところ、異国よりやってきた聖女に公太子が入れ込んでいることがわかった。
『ユーリの話す前世のことが真実なのか、俺にはわからん。だから、ここからはお前一人でなんとかしろ。もし殿下との婚約が認められなければ、お前は跡継ぎから下ろ……いや、ローヴはたぶん向いてない。ローヴかリーリエが結婚して子が生まれるまでは、お前が中継ぎの辺境伯に……』
『父上、万が一婚約が認められなければ俺はどんな手段を取るかわかりません。家に迷惑をかけるつもりはないので、その時は廃嫡してください』
『いやちょっと待って!?手段は選ぼうせめて!?』
『好きな女を手に入れるのになりふり構ってられませんよ。父上だって、従兄殿と決闘して母上の婚約者の座をもぎ取ったんでしょう?』
『うっ……いや、あれは合法だったから全然違う話だ!!』
そこから色々あったけど、無事に依子との婚約が陛下に認められた。アルベール公国を黙らせた上で王女殿下を無事に連れ帰ったことに加えて、聖女を我が国の手中に収めたことも評価された。とはいえココは王宮預かりではなく、当面は辺境伯騎士団に従事してもらうことになっている。王族に不信感を持つ彼女をイキナリ王宮に預けても上手くいかない可能性の方が高いし、イオル殿下に一発喰らわせるための手ほどきをしたら「ユーリ様は私の師匠です!色々教えてください!!」と懐かれた。ちょうどいいので程よく鍛えて依子の護衛につけよう。不世出の聖女を護衛につけた王女なんて他にいないだろう。依子と聖女を結びつけることは多方面への牽制にもなるしちょうどいい。
「はぁ……第三王女より、平民の出とはいえ高い能力を持った聖女の方が尊ばれるかもしれないのに、兄上は心底エルフリーデ王女殿下のことしか見ていませんね」
わざわざ自室を訪ねてきた弟のローヴに一連の出来事を話すと、この呆れた反応が返ってきた。
「俺の価値観とはかけ離れた意見なんて、何も心に響かないよ。大事なのはそんなことじゃないからな」
「それもそうですね。兄上の望みが叶ったなら、家族一同祝福しますよ。それにエルフリーデ王女殿下がここに住むのなら、兄上はバウス辺境伯領を大陸で一番安全な地になさるのでしょう……そういう点でも、やはり兄上が跡を継ぐのが一番だ」
「俺とエルフリーデ王女殿下の平穏な暮らしを脅かす奴が居たら、一族郎党滅ぼすと決めてる。怪しい動きがあったらすぐに教えてくれ」
「はいはい……それにしても、氷の王女はうちに来て大丈夫ですかね。我が家の気風に馴染めます?」
「それさ、誰が言い出したんだ?ずっと気になってたんだけど、あの子のどこが氷?」
「あの子!?あの怜悧な美貌の第三王女殿下をあの子呼ばわりするなんて、兄上だけですよ!」
「うーん、俺が知ってるあの子と王女殿下のパブリックイメージにかなり開きがありそうだなぁ」
依子は俺が居れば表情が柔らかくなるし、王家では末っ子だけど依子の頃はうちの弟妹を凄く可愛がっていたから、きっとローヴやリーリエとも上手くいくだろう。特にリーリエは王女様に憧れがあるので、仲良しな義姉妹になってくれると思う。
「半年後には輿入れ予定だから、そのつもりでな」
「半年?早すぎません?どんなに短くても一年は婚約期間を設けるのが一般的でしょう」
「あのなぁ、今更一年も待つ必要がどこにある?こちとら三歳の頃から結婚したくて堪らなかったんだぞ。半年でも正直長い」
「……兄上が心底惚れ込んだ女性がどんな方なのか、今から楽しみです」
◇◇◇
それから四か月後に、エルフリーデ=メルリス・バーデン第三王女殿下とユーリ=カイト・バウス辺境伯嫡男は婚姻を結び、一年後には国を挙げて盛大な式を執り行った。式には聖女ココレーヌも参列し、盛大な祝福の光を降らせて話題となった。この光を浴びた多くの参列者は、向こう三年は病気知らずになるという素晴らしい効能があったという。その噂を聞きつけたアルベール公子イオルは、聖女奪還のため少数の兵を引き連れ密かにバウス辺境伯領に攻め入ったものの、わずか5分程度で降伏させられたそうだが、それはまた別の話。
「ねー依子、俺の前でも“氷の王女”っぽくしてみてよ」
「は?なによ急に」
「だって俺だけ知らないよ、冷たい依子。俺以外はみんな今の依子にビックリするし、どんだけコエー顔してたのか見てみたい」
「絶対やらない!それに、やろうと思ってやってた訳じゃないから、どうしていいかわからない」
「そーかそーか、俺と一緒に居たら幸せ過ぎて冷たい顔なんて出来ないんだな」
「……そうじゃない!」
「わかってるよ、依子。愛してる」
「…………うん。私も」
「あ、素直な依子だ可愛すぎる。ベッド行こ」
「ちょっと待ちなさい!まだ明るい時間なんだからやめて…」
「オッケー了解。今夜、楽しみにしてる」
「~~~~~~っ!唯人!!」
こうして二人は、バーデン王国一のおしどり夫婦として近隣諸国にも知られる存在になり、末永く幸せに暮らしましたとさ。
「どうだった!?王女さまどうだった!!??」
「あなたたち、ちょっとは落ち着きなさい!で、どうだったのユーリ!?」
「ほら、お前も落ち着いて。で、首尾はどうだいユーリ……!?」
エルフリーデ王女殿下こと依子をバーデン王都に送り届けて、すぐ領地に帰ってきた。国王陛下は王城に滞在していくよう勧めてくれたけど、まだまだ事後処理が残ってると伝え丁寧に辞退した。一日も早く依子と一緒に暮らすために、やるべきことはまだまだ残っている。それに、どうせ客室に滞在したところで依子とイチャつけるわけでもない。
「ローヴ、留守中に変わったことはなかったか?ここ数日分の報告書は部屋に回しておいてくれ。リーリエ、王女様はとても可愛らしい方だったよ。後でゆっくりお話してあげる。父上、母上、今から少し時間をください。首尾は上々ですので、今後のことについて話し合いましょう」
「おぉ……!よくやった!よくやったぞユーリ!!」
「やったぁ!王女様がうちにくるのね?歓迎のパーティをしなくちゃだわ!!」
「……まじですか兄上。前世云々の話は妄言じゃなかったんですね」
「ユーリならやってくれると信じていたわ。これでバウス辺境伯家の跡継ぎは貴方に決まりね!」
弟妹と両親が大騒ぎしている隙に自室に戻り、この二日間の出来事に想いを馳せた。
しかし弟よ、妄言とは言ってくれたな。向こう一週間は厳しくしてやる。
「あー……連れて帰りたかった」
よく依子の手を離せたと、己の自制心を褒めてやりたい。このまま辺境伯領に連れて行こうかと道中何度も思ったけど、ここで国王陛下の不興を買ったら今までの苦労が水の泡だ。最終的にはどんな手を使ってでも依子を手に入れると決めていたけど、彼女にとって一番望ましい形でそうなるのがベストだと思っていたので、今日まで耐えてきた。
(俺はエルフリーデ王女殿下のデビュタントの日に一目見て依子だってわかったのに、アイツときたら……薄情ものめ)
けど、よくよく考えたら依子は興味がないものはまったく視界に入れないところがある。
そんな依子が別々の高校に進学してからも俺の事を気にしていると知った時から、絶対に依子と付き合って結婚すると決めていた。自分の想いは一方通行じゃないんだとわかって、物凄く嬉しかった。依子が俺をゆいくんと呼んだあの日からずっと、俺の一番は依子なのだ。
「これでよーやく結婚出来る……はぁ、長かった!」
まだ唯人だった頃、結婚間際で事故に遭い、古屋依子と秋月唯人のまま死んでしまった。依子は『銀行とかの名義変更で必要になるから』と早々に秋月姓のハンコを用意してたけど、結局使わずじまいだった。俺はどうしても依子と結婚したくて、唯人の記憶を持ったままユーリに生まれ変わった。だからこそこの世界のどこかに依子の記憶を持った女性がいると信じ続けて、エルフリーデ殿下のデビュタントの夜会で彼女を見付けたときは歓喜した。
「さて、と。一番邪魔だったアルベール公国は片付けたし、あとはトルネオ王国の第二王子を黙らせとくか。それから国内の有力貴族で王女の降嫁狙いの家をリストアップしておこう」
エルフリーデ殿下のデビュタントの翌日、すぐさま両親を説得し王家に婚約の打診をした。国防の要たるバウス辺境伯家の嫡男と第三王女だったら悪くない組み合わせだし、跡継ぎになるため文武両道たれと厳しく育てられてきた上に、幼い頃から前世の記憶があったおかげで同年代の男子より優れている自負があったため、当然自分が選ばれると思っていた。何より依子なら何の迷いもなく自分を選ぶと信じて疑わなかった。その結果、アルベール公国の世継ぎに競り負けてまんまと婚約者の座を持っていかれてしまったので、何事にも油断は禁物だと手痛く学んだ。
『俺には前世の記憶があります。前世、こことは異なる世界でエルフリーデ王女殿下と婚約していて、結婚する直前に事故で死んだので彼女に未練があります。彼女以外と結婚するつもりはないので、俺を跡継ぎから外してください』
家族の前でそう宣言したら、大騒ぎになった。自慢の息子が厳しく育て過ぎたせいでおかしなことを言いだしたと父は嘆き、真実ならロマンティックだけど妄想だったらかなりヤバいのでどのみち後は継がせられないと案外母は冷静で、跡継ぎは兄がなるものだと思い補佐をするため育てられてきた弟は「今更俺が跡継ぎになるかもだなんて冗談じゃない!無理!!」と逃亡しかけたのでとっ捕まえて直々に跡継ぎ教育を施した。次期辺境伯の座を放り出す気はなかったが、最重要事項は依子と結婚することなので、場合によってはやむなしだと考えていた。なお幼いリーリエはすんなり受け入れてくれて、王女様が未来のお義姉さまになったらステキねとはしゃいでいた。可愛い妹だ。
俺の本気を感じ取った家族たちは、どうにかしてエルフリーデ王女殿下とアルベール公太子の婚約を解消させ、王女殿下を長男の嫁にもらう手段はないかと考え始めた。一家で話し合い、公国に間諜を忍ばせ周辺諸国からも情報を集め内情を探ったところ、異国よりやってきた聖女に公太子が入れ込んでいることがわかった。
『ユーリの話す前世のことが真実なのか、俺にはわからん。だから、ここからはお前一人でなんとかしろ。もし殿下との婚約が認められなければ、お前は跡継ぎから下ろ……いや、ローヴはたぶん向いてない。ローヴかリーリエが結婚して子が生まれるまでは、お前が中継ぎの辺境伯に……』
『父上、万が一婚約が認められなければ俺はどんな手段を取るかわかりません。家に迷惑をかけるつもりはないので、その時は廃嫡してください』
『いやちょっと待って!?手段は選ぼうせめて!?』
『好きな女を手に入れるのになりふり構ってられませんよ。父上だって、従兄殿と決闘して母上の婚約者の座をもぎ取ったんでしょう?』
『うっ……いや、あれは合法だったから全然違う話だ!!』
そこから色々あったけど、無事に依子との婚約が陛下に認められた。アルベール公国を黙らせた上で王女殿下を無事に連れ帰ったことに加えて、聖女を我が国の手中に収めたことも評価された。とはいえココは王宮預かりではなく、当面は辺境伯騎士団に従事してもらうことになっている。王族に不信感を持つ彼女をイキナリ王宮に預けても上手くいかない可能性の方が高いし、イオル殿下に一発喰らわせるための手ほどきをしたら「ユーリ様は私の師匠です!色々教えてください!!」と懐かれた。ちょうどいいので程よく鍛えて依子の護衛につけよう。不世出の聖女を護衛につけた王女なんて他にいないだろう。依子と聖女を結びつけることは多方面への牽制にもなるしちょうどいい。
「はぁ……第三王女より、平民の出とはいえ高い能力を持った聖女の方が尊ばれるかもしれないのに、兄上は心底エルフリーデ王女殿下のことしか見ていませんね」
わざわざ自室を訪ねてきた弟のローヴに一連の出来事を話すと、この呆れた反応が返ってきた。
「俺の価値観とはかけ離れた意見なんて、何も心に響かないよ。大事なのはそんなことじゃないからな」
「それもそうですね。兄上の望みが叶ったなら、家族一同祝福しますよ。それにエルフリーデ王女殿下がここに住むのなら、兄上はバウス辺境伯領を大陸で一番安全な地になさるのでしょう……そういう点でも、やはり兄上が跡を継ぐのが一番だ」
「俺とエルフリーデ王女殿下の平穏な暮らしを脅かす奴が居たら、一族郎党滅ぼすと決めてる。怪しい動きがあったらすぐに教えてくれ」
「はいはい……それにしても、氷の王女はうちに来て大丈夫ですかね。我が家の気風に馴染めます?」
「それさ、誰が言い出したんだ?ずっと気になってたんだけど、あの子のどこが氷?」
「あの子!?あの怜悧な美貌の第三王女殿下をあの子呼ばわりするなんて、兄上だけですよ!」
「うーん、俺が知ってるあの子と王女殿下のパブリックイメージにかなり開きがありそうだなぁ」
依子は俺が居れば表情が柔らかくなるし、王家では末っ子だけど依子の頃はうちの弟妹を凄く可愛がっていたから、きっとローヴやリーリエとも上手くいくだろう。特にリーリエは王女様に憧れがあるので、仲良しな義姉妹になってくれると思う。
「半年後には輿入れ予定だから、そのつもりでな」
「半年?早すぎません?どんなに短くても一年は婚約期間を設けるのが一般的でしょう」
「あのなぁ、今更一年も待つ必要がどこにある?こちとら三歳の頃から結婚したくて堪らなかったんだぞ。半年でも正直長い」
「……兄上が心底惚れ込んだ女性がどんな方なのか、今から楽しみです」
◇◇◇
それから四か月後に、エルフリーデ=メルリス・バーデン第三王女殿下とユーリ=カイト・バウス辺境伯嫡男は婚姻を結び、一年後には国を挙げて盛大な式を執り行った。式には聖女ココレーヌも参列し、盛大な祝福の光を降らせて話題となった。この光を浴びた多くの参列者は、向こう三年は病気知らずになるという素晴らしい効能があったという。その噂を聞きつけたアルベール公子イオルは、聖女奪還のため少数の兵を引き連れ密かにバウス辺境伯領に攻め入ったものの、わずか5分程度で降伏させられたそうだが、それはまた別の話。
「ねー依子、俺の前でも“氷の王女”っぽくしてみてよ」
「は?なによ急に」
「だって俺だけ知らないよ、冷たい依子。俺以外はみんな今の依子にビックリするし、どんだけコエー顔してたのか見てみたい」
「絶対やらない!それに、やろうと思ってやってた訳じゃないから、どうしていいかわからない」
「そーかそーか、俺と一緒に居たら幸せ過ぎて冷たい顔なんて出来ないんだな」
「……そうじゃない!」
「わかってるよ、依子。愛してる」
「…………うん。私も」
「あ、素直な依子だ可愛すぎる。ベッド行こ」
「ちょっと待ちなさい!まだ明るい時間なんだからやめて…」
「オッケー了解。今夜、楽しみにしてる」
「~~~~~~っ!唯人!!」
こうして二人は、バーデン王国一のおしどり夫婦として近隣諸国にも知られる存在になり、末永く幸せに暮らしましたとさ。
