夏と先生と初恋。





「明日の朝練の時間で


藤木先生がおっしゃっていたことについて


話し合うので、


全員、音楽室に集まるようにしてください」



こんな話し合いをするのは初めてだ。


どんな話し合いになるんだろう。



「何か連絡のある人はいますか?


……じゃあ解散します」



「おつかれさまでした」と、挨拶が響いて、


部員たちが一斉に動き出す。



「藤木先生、なんかすごい人だね」



楽器を片付けていると、


自分の楽器とケースを持った沙耶が横に並んだ。



「うん。鈴木先生と全然違った」



鈴木先生というのは前の顧問の先生。


合奏中にブチギレて合奏を辞めたり、


酷い時には指揮棒をへし折るような先生だった。



「こんなに平和な合奏、初めてだったよー


平和の尊さを実感できた」



大袈裟な身振りをつけた沙耶が、冗談ぽく笑った。



「平和の尊さって、…、


ふふっ、なんか、違くない?」



ついつられて笑ってしまったけど、


沙耶の言いたいこともよくわかる。