夏と先生と初恋。

「じゃ、残りの時間は、


基礎練習続けようか」



そこからはとにかく必死だった。


藤木先生が怒鳴ってきたり、


理不尽なことを言ってくることは一切なかった。


でも、



「ただ音を出せばいいってわけじゃない。


しっかり鳴る〝響く音〟をイメージしてごらん?」



わたしたちの粗いところを、


次々と的確に指摘していく。



「うん。今の、良かったと思うよ。


この音を忘れないで」



上手くできれば褒められる。


ここが前の顧問の先生との1番の違いだった。



「今日の基礎練習はここまでかな。


みんな、前よりいい音がするようになったよ」



気がつけば、部活終了のチャイムが鳴っていた。



「ありがとうございました」



部員達の声が音楽室に響く。


ふわりと微笑んだ先生は、


指揮棒をしまって音楽家を出て行った。


なんとなく、綺麗な人だな、と思った。


次に前に立ったのは部長の先輩。