夏と先生と初恋。


「…ありがとう、ございます」



変わらない微笑みで


こちらを見ているはずの先生の顔は、


どこか悲しそうだった。



「…竹中は、このソロはどんなシーンだと思う?」



どんな、シーン。


どんなシーンなんだろう。



「…抜け出そうとしてるように、聞こえます」



「え?」



「悲しいこととか辛いことを振り切って、


前を向こうとしているような、そんな気がします」



課題曲の、行進曲『エール』のような力強さはない。


弱くて、脆くて、今にも壊れそうで、


それでも前に進む、そんな旋律。



「…うん。俺もそう思う。


全部の感情を自分の糧にして、


暗闇に伸びるたった一筋の光に手を伸ばす。


———たとえ暗闇から抜け出すことができなくても。


そんな足掻きが表現された旋律なんじゃないかな」



このソロに続くメロディーは、


決して明るいものじゃない。