夏と先生と初恋。

目の前にはソロの楽譜。


ちょっとだけ。


吹いてみるだけ。


そう思いながら音符をなぞる。


一気に高い音まで駆け上ったかと思えば、


長い音が続き、明るく盛り上がる。


その盛り上がりもすぐに落ち着いて、


ゆっくりゆっくり沈み込んで、


周りの音に溶けていく。


綺麗な旋律だ。


柔らかくて、物悲しくて、どこか切ない。


すごく好きだな。


好きだと思えば思うほど、


吹きたいと思う気持ちがふくらめばふくらむほど、


こわさも大きくなっていく。


結局は堂々巡り。



「うん。綺麗。


柔らかくて温かみのあるいい音だね」



え、?


藤木先生?


なんで…



「竹中の音の柔らかさと、


この曲の相性がいいみたいだね。


この先きっと練習したらもっとすごいものになる」



わたしに、この先はないかもしれない。


このまま覚悟が決められないままなら、


きっとこれがこの旋律を吹く最初で最後。