夏と先生と初恋。

なのに。


その小さなミスに焦ったわたしは、


マウスピースを咥える力を強めてしまった。


ピィー、とホールに響くリードミス。


頭が真っ白になった。


わたしのソロは、止まってしまった。


ほんの数秒の沈黙が、永遠のように感じられた。


先輩たちは誰もわたしのことを責めなかった。


あれ以来、わたしはソロが怖い。



「…こわいんだ。すごく。


またあんなふうになったらって思うと、


オーディションなんて受けなくていいや


って思っちゃう」



なのに、心のどこかでは、


ソロを吹きたいと思っている。


その矛盾が苦しい。



「…ひま」



自分のことのように悲しそうな顔をしてくれる沙耶。



「…ひまがオーディションを受けなくても、


結局はオーディションに残った誰かがソロを吹く。


その誰かだってきっと上手いよ。


だけど、…あたしはコンクールのステージの上で


ひまのソロを聴きたい」