夏と先生と初恋。


本来は部活のない水曜日。


とは言っても、練習しにくる人はそれなりにいる。


わたしと沙耶だってその1人。



「…どうだろう」



わたしはクラリネットのソロのオーディションを


受けるかどうか決められないでいた。


ソロを吹きたくないわけじゃない。


吹きたい気持ちも大きい。


なのに。



「ひま…もしかして、まだ、…」



ときどき、あの日のことを思い出す。


ホールいっぱいに立ち込めた沈黙を。


わたしのせいで全部が壊れてしまったことを。



————去年のコンクール、わたしはソロを吹いた。


その時の3年生でも2年生でもなく、


1年生だったわたしがオーディションで選ばれた。


激しい連符で、テンポの速いソロだった。


一瞬、ほんの一瞬だけ、指がもつれた。


その時点では、なにも問題なかった。


きっとそのミスに気がついたのは、


ソロを吹いていたわたしだけだったと思う。