夏と先生と初恋。


「任せたよ、ひまりちゃん」



その、言い方は、まさか、


わたしが次の——


いや、そんなわけないか。



「ま、私たちが引退するまで


あと2週間くらいはあるしね」



凛とした顔でこちらをみる希空先輩は


とてもかっこよかった。




✳︎✳︎✳︎




吹奏楽部に一年生が加わった。


クラリネットに入ったのは計4人。


そのうち3人が中学校で吹奏楽をやっていた経験者。


1人は高校で楽器を始める初心者だ。



(あおい)ちゃん、基礎練一緒にやろっか」



高校からクラリネットを始めたのは、


葵ちゃんという女の子。



『去年のコンクールで聞いたクラリネットのソロが


忘れられなくて、ここの吹奏楽部に入りました!』



入部初日に、満面の笑みでそう教えてくれた。


葵ちゃんは去年、友達に誘われて


コンクールを聴きにきてくれていたらしい。


クラリネットのソロ、か。


確かにあれは、色んな意味で忘れられない音だろう。


葵ちゃんは始めたばかりだから、


まだまだ他の1年生には及ばないけど、


教えたことをすぐに吸収する器用な子だ。



「いつもは梨香先輩とどんな基礎練してる?」



そう、普段葵ちゃんにクラリネットを教えているのは


わたしじゃなくて、梨香先輩。