夏と先生と初恋。


「え…?」



そこに立っていたのは、藤木先生。


なんで…?



「やってごらん。きっとできるよ」



その子は、藤木先生に促されて


再び同じフレーズを吹く。



——変わった。


まだ少し不安定な部分もあるけれど、


前よりもずっと、芯のあるいい音になった。



「うん。その感じだよ。


ちゃんとできてるから大丈夫」



不安げに先生の反応を伺っていた顔が、


一気に明るくなった。



「…ありがとう、ございます」



「これが、俺の仕事だからね。


でも、できるようになって良かった」



この先生は全てが柔らかい。


物腰も、笑い方も、立ち居振る舞いまでもが。


だからこんなにも、


他人(ひと)を魅了するのかもしれない。



「…今吹いてるのは〝はるのうた〟だよね?」



「はい、そうです」



今パートで合わせていたのは、


課題曲の3番、はるのうた。