夏と先生と初恋。

もちろん必要な練習だから、やって正解だと思うけど、


梨香先輩の圧が強すぎて正直それどころじゃない。



「右端から順に」



右端に座るのはわたしと同じ2年生。


大人しくて、音で主張するのが苦手な子だ。


梨香先輩の圧に負けて、


泣きながら吹いているところも見たこともある。


大丈夫かな。


不安は的中。


飛び出た音は、緊張からか、


速くなったり遅くなったり不安定。


辛うじてメトロノームに置いてかれてはいないものの、


今にもずれてしまいそうだ。


吹き終わった彼女は、


自分でも音の不安定さはわかっているのだろう。


ぐっ、と唇を噛み締めた。



「…もう一回」



淡々と指示を出す梨香先輩。


2回目。


さっきよりは良かったと思う。


だけど、梨香先輩が認めるレベルには


到底辿り着いていなかった。



「真っ直ぐ息を入れてごらん。


太い息の柱を楽器に流すイメージ、かな」