夏と先生と初恋。

端から端まで全て、お客さんでいっぱいだ。


1500人…いや、


もしかしたら2000人以上いるかもしれない。


陽光高校の吹奏楽部の定期演奏会は、


それほどに大規模なイベントだった。



「ひま、今から吹くの、課題曲2番だって」



隣に座る沙耶に小さな声で話しかけられる。


課題曲2番は確か…


リーフ・マーチ。


メロディーの細かい音符に


どことなく艶やかな大人っぽさを感じられる、


そんな曲だ。


陽光高校はどんな演奏をするのだろう。


指揮棒が上がって、演奏者が息を吸った。


真っ直ぐに飛び出した音は、ホール中に響き渡る。


…すごい、何もかもがわたしたちとは違う。



『これが、音楽だよ。


世界をつくるんだ』




唐突に藤木先生の言葉を思い出した。


これが、…陽光高校のつくる世界。


コンクール本番まで、あと4カ月半はある。


それでこのクオリティー。


世界の鮮明さ。


純粋に、敵わない、と思った。