「じゃあ、1番の頭から通してみようか」



ごくり、と唾を飲んで楽器を構える。


音楽室にピリリと緊張した雰囲気が漂った。




———始まりは昨日の放課後。


わたしたちが藤木先生に、


全国大会金賞を目指したい、と


伝えた後のことだった。



「そろそろ、コンクールで演奏する


課題曲を決めないといけないね」



コンクールでは、


自由曲と課題曲の二曲を演奏する。


自由曲は、言葉の通り、自由に選ぶことができる。


反対に課題曲は、


決められた4曲の中から一曲を選んで演奏する。


課題曲には1〜4番までの番号が振られていて、


確か今年は、


マーチが二曲に


ポップスとクラッシックが一曲ずつ


の計4曲だったはずだ。



「とりあえず、4曲全部練習してみようか」



…4曲全部?!


鈴木先生がこんなこと言ったことはなかった。


鈴木先生が選んだ曲を渡されて、


わたしたちはただそれを練習するだけ。



「みんなに1番あった曲を選びたい。


みんなが持っている音に1番あった課題曲を選ぼう」



わたしたちにあった曲。