夏と先生と初恋。

実際、双子(きょうだい)のように過ごした時間が長すぎて、


わたしも涼も、


お互いただの幼馴染としか思っていないのだけど。



「俺は別に勘違いされてもいーけどね」


「よくないでしょ。


涼に彼女できたとき困るでしょ?」


「彼女とかつくる気ねーし」



そんなこといいながら、


突然、彼女できた、って言ってくるのが涼なのだ。



「はいはい、」



不満げに口を尖らせる涼のスマホが、


ピロンと音を立てて鳴った。



「やっべ、


今日、集まりより早く来いって


先輩に言われてたの忘れてた」



スマホに目を落とした涼の顔に焦りが浮かんだ。



「俺走ってくわ、じゃーな」



わたしの返事を待たずに駆け出した涼は、


あっという間に小さくなっていった。


わたしだって時間に余裕があるわけじゃない。


涼を追いかけるように歩くペースを上げた。


わたしが音楽室に着いた時には、


3分の2くらいの部員がそろっていた。


少し経って、部員が全員集まると、


部長の先輩が口をひらいた。



「みんなは、どこを目指したいと思ってる?」



部長は藤木先生に出された問いを、


再びわたしたちに向かって投げかける。