夏と先生と初恋。

「はい」



綺麗に揃った返事。


でもその声には普段のような勢いはない。


椅子を引く音。


楽譜をまとめる音。


誰も何も話さずに音楽室を出ていく。


蒸し暑い廊下を抜けて、教室へ向かう。



「ねぇ、それでさ!」


「うそでしょ?」



通りかかった教室から聞こえる笑い声。


聞き覚えのあるその声。



「…やばっ」



…コンクールメンバーじゃない部員たちだ。


わたしたちに気がついた瞬間、笑い声がぴたりとやんだ。



「…練習しよっか」


誰かの一言で、机の上に置き去りになっていた楽器に手が伸びる。


お互いに、何も言えなかった。


わたしたちは、そのままその教室を通り過ぎた。


あの沈黙が正解なのかがわからない。


わたしには、なんと声をかけていいかわからなかった。



「…ひまり」



名前を呼ばれて振り返る。


そこに立っていたのは紗希先輩。