司書がせわしなくメガネを指先で触りながら本を差し出した。
彼に黒の魔石の話をすると、それは一大事だと一緒に調べてくれている。
「もしかするとこの滝が〝古竜の滝〟かもしれません」
西山には滝が沢山あるが、現在〝古竜の滝〟という名の滝はない。
司書が指を指す古文書には、竜が住んでいる場所が書かれている。うねる呪文のような文字を見てリーナはこくこくと頷いた。
「凄い! 地図を合わせるとちょうどこの滝ですね!」
「しかし妃殿下は凄いですね、古文書が読める方は貴族でもめったにいないというのに」
「古い本が好きで」
笑ってごまかしたが、好きというよりも楽しみはそれしかなかったと言っていい。リーナの部屋の奧には捨て置かれた物置があり、そこにあった古い本を読むために独学で学んだのだった。
(とにかくよかったわ)
出発は明日だ。



