死に戻ったお荷物姫は半年後の処刑を回避したい~でも、冷徹皇太子からの溺愛は想定外です!~

 強い治癒力という保証はない。むしろ怪しいものだと思う。強い治癒力があるならばお荷物姫などと軽んじられるはずもなく、あってもせいぜい僅かな力だろう。

 だが、ミスティアにいる諜報員からも彼女に治癒力があるという報告は受けているので力そのものがあるのは間違いなかった。

 帝国にも神殿の大神官や聖女と呼ばれている公女ヴィクトリアがいて、レオナルトとの縁談を望んだが、肝心なレオナルトがなんとしても首を縦に振らない。

 小国とはいえエヴァンジェリーナは一国の王女であり体面は保てる。うまくいけば治癒力を持つ子を授かるかもしれず、そうなれば皇族の権威はますます増大するという打算が働いた。

 遂に皇帝はしぶしぶと首を縦に振った。

「仕方あるまい」

「ありがとうございます」

 恭しく頭を垂れたレオは、踵を返しつつ遠い記憶を脳裏に呼び起こした――。

(あれから八年か)

 レオが十五歳のときである。

 お忍びでミスティア国を訪れ、とある姫と出会った。

『私の名前はリーナよ』

 幼かったゆえ、彼女は覚えていないだろう。

 だがレオの瞼の裏には、薄いピンク色をした少女の姿がしっかりと焼き付いていた。