ドアを開けたら異世界でした~チートも使命もないアラサー女子は冷血鬼教師に拾われました。~


「さぁ、着いたぞ。ここがラーク。人間族の一二を争う大帝国だ」
「緑豊かな綺麗な国ですね」

 もっと近代化されているのかと思いきや、そうでもなかった。けれど、田舎という感じではなく、自然と調和していて都市である。これこそ地球が目指している“未来都市”なのかも知れない。

 人々はみんな生き生きとして、楽しそうに過ごしている。魔法を使っている人なんかもいて、ファンタジーの世界だった。
 実際に見られるなんて……テンションが上がらないわけがない! とにかく幸せで年甲斐もなくはしゃいでいたと思う。


 移動中、エルヴィスさんはいろいろ教えてくれた。
 この世界はアスラークと言って、言葉を交わせる種族は大きく分けて“人間族”と“魔族”の二つ。エルフと獣人族もいるらしいけれど、人数が少ないため最果ての地でひっそり暮らしているそうだ。
 人間族と魔族は千年以上、仲が悪く。人間族有利の冷戦状態だったが、十数年前に魔王が代替わりしてからと言う物、あっと言う間に魔族優勢に変わっていったそうだ。
 それを不満に思った人間族側が、冷戦を破り――人間族と魔族の国境境である領域では戦争の真っ最中だとか。それ以外はまだ被害の報告は出ていないらしい。

 ……それってむしろ人間の方が悪くない?

 だから、私が異世界人だってことは、しばらく伏せておいた方がいいと警告された。エルヴィスさんは王様を信用してないらしく、何かあると王様に原因があると言っている。口ぶりから知り合いらしい。
 本人には怖くて聞けなかったけれど。

 ちなみにエルヴィスさんは王都学園の教師もしているそうだ。