――うん、これは夢。
電車で運よく座れたし、きっと爆睡→異世界妄想ルートに突入。
夢だったら、そのうち覚めるでしょ。だったらこれ以上深く考えないで話に合わせて、楽しんじゃおう!!
「……まぁ、ラークに戻れば何かわかるかもしれん」
「えっ、調べてくれるの!?」
え、意外。てっきり置いてかれると思ってた。やっぱり夢補正?
「ちょうど遺跡の調査が終わったところだったからな。礼は――そうだな、異世界の話でも聞かせてくれればいい」
「ありがとうございます! なんでも話します!」
おお、展開がスムーズすぎる。夢、万歳。
「交渉成立だな。俺はエルヴィス。考古学者だ」
「私は穂香。元の世界では事務職してました。よろしくお願いします」
定番の自己紹介と握手。
最初はひんやりしていた手が、少しずつ温かくなっていく。
……ツンデレ属性ですか?
「ああ。あっちに車がある。二時間もあれば着く」
「え、車? 魔法の世界じゃないの!?」
「馬鹿にしてるのか? エネルギー源は魔力だ。そっちの世界では違うのか?」
少し眉間にシワを寄せて、声が低くなる。
うわ、なんか怒らせた? 思わず一歩下がる。
「いやいや、バカにしていません。ただちょっと意外で……」
危ない危ない。異世界初日で地雷踏むところだった。
「私の世界では、魔法は空想の中の存在。車は、人間が作ったエネルギーで動いています」
よし、ナイス説明。オタク知識、発揮完了。
「ほう、それは興味深いな。こちらでは誰もが魔力を持っているため、動力を研究する者はほとんどいない」
「まぁ……そりゃそうなるよね」
魔法がエネルギー源として使えるなら、電力もガソリンも不要。
つまり、科学と魔法の融合世界――ってやつ?
どんな技術なんだろう。ちょっとワクワクしてきた。
