麻酔と記憶

 *夏の残り日と秋。
秋は食欲の秋だと君は美味しそうに柿を食べてたね。
その隣でもう一度、見れたなら。

 木々が紅に染まっている。
夜も老けていて、静寂が騒がしい。君と一緒に近くの河川敷に寝転がって星を見上げる。
無数の星屑たち。
その星屑たちが連なって星座となり、星座が集まって星空になる。
記憶も同様に。ひとつひとつのシーンが集まって物語となって、人生へと変化していく。この時間も、シーンのひとつだ。

「見てあれ、ペルセウス座」

君が宙に指を突き立てる、無数の星屑たちの中からたったひとつを見つけることは難しい。
目を凝らして見てみたけれど、探すことが出来なかった。

「ねえ、知ってる?
星って、何億光年も輝いてるんだって」

君の横顔を眺める。
星の輝きをそのまま瞳に移したように瞳が輝いていた。
その星屑が頬へと流れた。
それでも、君は気にせずに星を眺めている。
夜空を眺めた。
地球も、太陽も、宇宙もなかった時代。
そんな中でも今見ている星屑たちは輝いていたのかもしれない。
星を、夜空を見上げる。でも実は、星が人間を見下しているのかもしれない。
いつから人間はそんなに偉くなったんだ。
尊い命を平然と捨てて、実際人間が殺されれば命がどうだ、可哀想だなんだと喚いて。
星のも無機物にも命があって、大切にすれば命が宿る。
星にも、記憶にも、時間にも。
この世の全てはひとつひとつの物質に過ぎない。
名称ばかりをつけて、境界線を引かず。
だらだらと名前を付けて選んで。
全てただの物質なのに。
ただの水を固体・液体・期待に分けるみたいに全てになめを付けて、分類する。
でも、そのおかげで世界が成り立っているのかもしれない。そう考えると感慨深いものだ。全てが物質で、全てが虚像。

 月が頬を照らす頃。
君はカメラを取り出して、宙を撮った。

「なに撮ったの?」

「ペルセウス座」

君はそれだけを言って、また写真を眺めて微笑んでいる。君は、どこまで写真が好きなのか。
一途なところも、愛おしい。
写真を見て、頬にアガ焼きを落とす君の横顔をいつまでも眺めていた。
いつまでも、いつまでも、君の横顔を眺めていたい。


 夏の残り日と秋。
そんな秋の夜空に輝く星屑たちを君と一緒に眺める。いつの日か、輝きがなくなったとしても、きっと、星屑たちが憶えていてくれるはずだから。