〇5話の続き・社会科資料室
ドアにところで、ミナトが不機嫌そうにあんずと森を見ている。
あんず(篠崎くん?)
ミナト「悪い。手がすべった」
あんず(?)
ツカツカと部屋の中に入ってくるミナト。
ミナト「あんず、それ、もう終わりそう?」
あんず(ちょ、ちょっと、森くんがいるのに!)
あっけに取られる森。
ミナト「森くん、もういいよ。あとはオレが手伝うから」
森「え? いや、いいよ。この前だって代わってもらったし」
ミナト、森をギロリと見る。
ミナト「だから、もういいって。どういうことか、わかるだろ?」
絶句する森。
ミナトはそんな森の肩を抱いて、資料室の外に押し出すと、そのまま扉をばたんと閉める。
追い出されてあっけにとられる森。
あんずは、驚愕の表情でその様子を見ている。
ミナトがあんずのそばに戻ってくる。
あんず(ハッと我に返って)「なにするの?」
ミナトがあんずを壁際に追い詰める。
あんず、ミナトの脇から逃れようとする。しかし、ミナトは逃がさない。
ミナトがぐいと顔を近づけてくる。
ミナト「頼むから、オレ以外の男とふたりきりにならないで」
切なそうな表情に心がゆれるあんず。
あんず(なんで?)(なんで、篠崎くんは、わたしにここまでするの?)(わたしたち、話したこともなかったよね……?)
あんずの頭に中学時代の思い出がふたたびよみがえってくる。
A『は? 委員長? ないない! オレ、女の子らしくて、守ってあげたくなるタイプが好みだもん』
A『だって、勉強教えてくれたりするしさ。いろいろ便利なんだ』
あんず(手紙を送った犯人もまだわかってないし)(篠崎くんの気持ちが本当かなんてわからない)
(でも、もし本当だったら……? わたしは篠崎くんをだましていることになるの?)
ミナト(黙ったあんずを不審に思って)「あんず?」
あんず、顔を上げる。意を決した表情。
あんず「篠崎くん、わたし、話があるの。あの手紙は……」
とたん、ミナトがあんずをぎゅっと抱きしめる。
あんず「?」
ミナト「あんず、好きだ。大好き」
あんず、真っ赤になって心臓がバクバク言い始める。
ミナト、あんずの髪や耳、首筋にキスする。
あんず「ちょ、ちょっと待って……篠崎くん……」
あんず(これ以上、流されちゃダメ! 本当のこと言わなくちゃ!!!!)
あんず、ミナトを突き放す。
あんず「お願い、聞いて! あの手紙はわたしが書いたんじゃないの! 誰かが勝手にわたしの名前を使って送ったの! だから、ぜんぶウソなの!!!」
言った後、自分の言葉にズキリと胸が痛むあんず。
ミナト「……だからなに?」
あんず「え……?」
ミナト「そんなの知ってたよ。あんずの字じゃなかったからね」
あんず「わたしの字って……?」
ミナト「そんなのどうでもいいんだ。たとえ、あの手紙がウソだとしても、オレはもう絶対にあんずを手放さないから」
ボーゼンとするあんず。しかし、次の瞬間、我に返ってミナトを突き飛ばす。
そのまま、資料室を飛び出していく。
ミナト「あんず!」
あんず(走りながら)(最初から知ってたって……。どういうことーーーーーーー?)
〇放課後・体育館
清岡がバレーの練習をしている。
ミナト「清岡!」
清岡が声のほうを見る。
体育館の入り口に立つミナト。不機嫌そうな表情。
〇部活の後・清岡の部屋
ミナト、ベッドに座ってクッションをかかえてブスっとしている。
清岡はマンガを読みながら、困った表情。
清岡「おまえ、話があるならさっさと言えよ。部活にまで来て、何の用だ?」
ミナト「……約束しただろう?」
清岡、首をかしげる。
ミナト「クラスの男に変な動きがあったら、オレに報告しろって!」
清岡「はぁ? 何のことだ?」
ミナト、今日の出来事を清岡に説明する。
清岡「あのなー、部活もあるし、そんないっつも監視なんてできるわけないだろ?」
ミナト「じゃあ、オレは何のために、おまえに尽くしているわけ? 勉強見てやったり、対戦相手について調べてやったり」
清岡「それはまぁ、助かってるな」
ミナト「だったら……」
清岡「高梨さんの好きな食べ物とかいろいろ教えてやっただろ? 女子の会話盗み聞きするのも大変なんだぞ」
その言葉を無視して、ベッドにつっぷすミナト。
ミナト「あー、なんで、オレ、あんずと同じクラスになれなかったんだろう」
「来年は、うまく手を回せるといいけど」
清岡「手を回すって……。おまえが言うとシャレにならないからやめろ」
清岡が、ため息をついてマンガを放り出す。
清岡「そんなに好きなら、もっと早く告白すればよかっただろ?」
ぶすっとするミナト。
ミナト「仕方ないだろ。ぜんっぜんオレに興味なさそうだったんだから」
女の子にキャーキャー言われて囲まれるミナト。
その横をあんずがまったく気にせず通り過ぎる様子の絵。
ミナト「ずっとどうやって近づこうか悩んでたんだ。……やっとチャンスが来たんだ。絶対に逃すもんか」
薄暗い表情のミナト。ゾゾゾと背筋に寒気が走る清岡。
〇次の日の中休み・中庭
お弁当を食べ終わったようすのあんずと千帆が並んで座っている。
千帆「ええっ? あの、篠崎ミナトに言い寄られてる?」
あんずが慌てた様子で、千帆の口を塞ぐ。
つづく
ドアにところで、ミナトが不機嫌そうにあんずと森を見ている。
あんず(篠崎くん?)
ミナト「悪い。手がすべった」
あんず(?)
ツカツカと部屋の中に入ってくるミナト。
ミナト「あんず、それ、もう終わりそう?」
あんず(ちょ、ちょっと、森くんがいるのに!)
あっけに取られる森。
ミナト「森くん、もういいよ。あとはオレが手伝うから」
森「え? いや、いいよ。この前だって代わってもらったし」
ミナト、森をギロリと見る。
ミナト「だから、もういいって。どういうことか、わかるだろ?」
絶句する森。
ミナトはそんな森の肩を抱いて、資料室の外に押し出すと、そのまま扉をばたんと閉める。
追い出されてあっけにとられる森。
あんずは、驚愕の表情でその様子を見ている。
ミナトがあんずのそばに戻ってくる。
あんず(ハッと我に返って)「なにするの?」
ミナトがあんずを壁際に追い詰める。
あんず、ミナトの脇から逃れようとする。しかし、ミナトは逃がさない。
ミナトがぐいと顔を近づけてくる。
ミナト「頼むから、オレ以外の男とふたりきりにならないで」
切なそうな表情に心がゆれるあんず。
あんず(なんで?)(なんで、篠崎くんは、わたしにここまでするの?)(わたしたち、話したこともなかったよね……?)
あんずの頭に中学時代の思い出がふたたびよみがえってくる。
A『は? 委員長? ないない! オレ、女の子らしくて、守ってあげたくなるタイプが好みだもん』
A『だって、勉強教えてくれたりするしさ。いろいろ便利なんだ』
あんず(手紙を送った犯人もまだわかってないし)(篠崎くんの気持ちが本当かなんてわからない)
(でも、もし本当だったら……? わたしは篠崎くんをだましていることになるの?)
ミナト(黙ったあんずを不審に思って)「あんず?」
あんず、顔を上げる。意を決した表情。
あんず「篠崎くん、わたし、話があるの。あの手紙は……」
とたん、ミナトがあんずをぎゅっと抱きしめる。
あんず「?」
ミナト「あんず、好きだ。大好き」
あんず、真っ赤になって心臓がバクバク言い始める。
ミナト、あんずの髪や耳、首筋にキスする。
あんず「ちょ、ちょっと待って……篠崎くん……」
あんず(これ以上、流されちゃダメ! 本当のこと言わなくちゃ!!!!)
あんず、ミナトを突き放す。
あんず「お願い、聞いて! あの手紙はわたしが書いたんじゃないの! 誰かが勝手にわたしの名前を使って送ったの! だから、ぜんぶウソなの!!!」
言った後、自分の言葉にズキリと胸が痛むあんず。
ミナト「……だからなに?」
あんず「え……?」
ミナト「そんなの知ってたよ。あんずの字じゃなかったからね」
あんず「わたしの字って……?」
ミナト「そんなのどうでもいいんだ。たとえ、あの手紙がウソだとしても、オレはもう絶対にあんずを手放さないから」
ボーゼンとするあんず。しかし、次の瞬間、我に返ってミナトを突き飛ばす。
そのまま、資料室を飛び出していく。
ミナト「あんず!」
あんず(走りながら)(最初から知ってたって……。どういうことーーーーーーー?)
〇放課後・体育館
清岡がバレーの練習をしている。
ミナト「清岡!」
清岡が声のほうを見る。
体育館の入り口に立つミナト。不機嫌そうな表情。
〇部活の後・清岡の部屋
ミナト、ベッドに座ってクッションをかかえてブスっとしている。
清岡はマンガを読みながら、困った表情。
清岡「おまえ、話があるならさっさと言えよ。部活にまで来て、何の用だ?」
ミナト「……約束しただろう?」
清岡、首をかしげる。
ミナト「クラスの男に変な動きがあったら、オレに報告しろって!」
清岡「はぁ? 何のことだ?」
ミナト、今日の出来事を清岡に説明する。
清岡「あのなー、部活もあるし、そんないっつも監視なんてできるわけないだろ?」
ミナト「じゃあ、オレは何のために、おまえに尽くしているわけ? 勉強見てやったり、対戦相手について調べてやったり」
清岡「それはまぁ、助かってるな」
ミナト「だったら……」
清岡「高梨さんの好きな食べ物とかいろいろ教えてやっただろ? 女子の会話盗み聞きするのも大変なんだぞ」
その言葉を無視して、ベッドにつっぷすミナト。
ミナト「あー、なんで、オレ、あんずと同じクラスになれなかったんだろう」
「来年は、うまく手を回せるといいけど」
清岡「手を回すって……。おまえが言うとシャレにならないからやめろ」
清岡が、ため息をついてマンガを放り出す。
清岡「そんなに好きなら、もっと早く告白すればよかっただろ?」
ぶすっとするミナト。
ミナト「仕方ないだろ。ぜんっぜんオレに興味なさそうだったんだから」
女の子にキャーキャー言われて囲まれるミナト。
その横をあんずがまったく気にせず通り過ぎる様子の絵。
ミナト「ずっとどうやって近づこうか悩んでたんだ。……やっとチャンスが来たんだ。絶対に逃すもんか」
薄暗い表情のミナト。ゾゾゾと背筋に寒気が走る清岡。
〇次の日の中休み・中庭
お弁当を食べ終わったようすのあんずと千帆が並んで座っている。
千帆「ええっ? あの、篠崎ミナトに言い寄られてる?」
あんずが慌てた様子で、千帆の口を塞ぐ。
つづく
