花火大会当日
*琴音*
「動かないでね。」
お母さんの声に私は小さく”うん”と
返事をする。
帯を締める手つきは慣れていて、
鏡越しに見るお母さんの横顔に安心する。
「久しぶりに浴衣着たわね。」
「小学生振りかしら。」
「……うん。」
胸の奥がすごくそわそわして落ち着かない。
「はい、出来た。」
「ありがとうお母さん!!」
私は着付けてもらい終えると、
今度は自分の部屋に戻ってメイクをする。
リップの色を選ぶだけで、
こんなに悩むなんて思わなかった。
理央君……どんな顔するのかな……。
私が風邪を引いた時看病しにきてくれた日
海に行った日、色んな理央君の顔が浮かぶ。
今日も良い日なれたら良いなぁ。
ヘアメイクを終えると、
スマホの画面が明るくなり見てみると
理央君からtalkメッセージが届いていた。
”もうすぐ着く”
胸がきゅっと鳴る。
晃は今日は何してるのだろ……。
晃と鉢合わせとかしちゃうのかな。
そうなったらまた、理央君と晃と
花火見る事になるのかな。
考えても仕方ないとわかってるのに、
考えてしまう。
でも、今日は今日。
楽しも!!
私は深呼吸して玄関へ向かった。
琴音 side 終わり
花火大会当日
*理央*
自分の部屋で、浴衣の帯を締め直す。
鏡の前で何度も確認。
「理央、緊張しすぎ。」
背後から聞こえた声に、
振り返ると俺の部屋のドアに
背もたれしながら姉貴が腕を組んでいた。
「顔つき……」
「完全に告白する前の男になってる。」
「いつから居たんだよ。」
「わかる?」
「わかるに決まってんでしょ。」
「あんたすぐ顔に出やすく」
「わかりやすい性格してんだから。」
姉貴は少しだけ笑っていた。
「それが、琴音ちゃんは」
「全然わかってなかったんだよね。」
俺は苦笑いしながら話しを続けた。
「夏奈の事俺が好きだと思ってたみたい。」
「えっ!?そうなの!?」
「あんたからの話し聞いただけど」
「だいぶ琴音ちゃんにアタックしてるの」
「わかるから、もうてっきり」
「琴音ちゃんは理央の気持ちに」
「気付いてると思ってたけど……」
「俺も3日前にその事本人から」
「言われて知った。」
「全力で否定したよ。」
「勘違いされたくなかったから。」
「そりゃーそうなるわね。」
「んで、今日言うんでしょ?」
「琴音ちゃんに自分の気持ち。」
「うん……もちろん。」
「だったら、全力で気持ち伝えて来な。」
そう言って姉貴はおれの両肩を叩く。
「痛ぇー……姉貴力強すぎ。」
「でも、ありがとう。」
「気合い入ったわ。」
「ちゃんと好きって気持ちぶつけなよ。」
「中途半端には絶対しないように。」
「うん、ありがとう!」
それからの俺は家を出て、
夜になる道を歩き、電車に乗り込み
琴音ちゃんのマンションを目指した。
今日の琴音ちゃんはどんなんだろう。
風邪引いた時、海に行った時……
いっぱい琴音ちゃんの事を考えて
しまう。
今日、また違う琴音ちゃんの表情を
見られたら良いなぁ。
理央 side 終わり


