「……東中園の花火大会って」
「3日後だよな?」
「うん、毎年恒例だよね。」
「去年は、引っ越す前だったから」
「電車で来てたけど、今回は」
「めっちゃ近い(笑)」
「家からでも見えると思う(笑)」
「毎年琴音ちゃんは行ってるんだね。」
「うんそだよ。」
「俺、その花火大会……」
「琴音ちゃんと一緒に行きたい。」
えっ……?
私はキョトンと目が丸くなった。
私てっきり、夏奈ちゃんの事を相談される
のかと思ってたから……。
まさか自分が、花火大会に誘われるなんて
思って居なかった。
「無理なら、全然断っても良い……」
「って言いたいけど、やっぱり嫌だ。」
「俺、琴音ちゃんと花火見たい。」
夕暮れの公園で、
俺の言葉は思ったよりも真っ直ぐ響いた。
理央君が、”一緒に花火を見たい”っと
言う言葉の後、空気が静止した。
私は少し視線を泳がせ、
ベンチの縁を指でなぞる。
「理央君……。」
「ん?」
「その……私で良いの?」
えっ……?
思ってもいなかった、琴音ちゃんの返しに
俺は一瞬言葉を失った。
「いいって?」
琴音ちゃんは困ったように笑う。
「だって理央君、」
「本当は夏奈ちゃんと」
「行きたいんじゃないの?」
その名前を聞いた瞬間、
俺の頭の中が真っ白になる。
「……は?」
「……えっ?」
思わず間の抜けた声が出てしまった。
「夏奈……?なんで?」
琴音ちゃんは少し慌てたように
続ける。
「あっ……ほら……」
「おっ……幼なじみだし、」
「夏奈ちゃんと理央君、ずっと一緒で」
「……だから理央君……夏奈ちゃんの」
「事が、好きなのかなって。」
琴音ちゃんからの言葉を聞いた瞬間、
胸の奥がシュンと音がなる。
今までの俺のアピールが伝わってなかった
のかなっと思って悲しくなった。
まぁ、琴音ちゃんは鈍感だから
仕方ないとはわかってんだけどな。
「……違う!!」
即座に俺は強く否定する。
「夏奈は幼なじみなだけ。」
「確かに、夏奈とは長い付き合い」
「だけど、本当ただの幼なじみ。」
「それに、アイツ彼氏いるじゃん。」
そう言って、俺は一度息を整えてから、
まっすぐ琴音ちゃんを見る。
「俺が、一緒に花火見たいのは」
「琴音ちゃんだから。」
夕暮れの生暖かい風が俺達の間を
すり抜けて行く。
「他の誰でもなくて。」
「代わりでもない。」
「俺は琴音ちゃんと花火大会デートしたい。」
私は驚きを隠せず、瞬きをいっぱいして
しまう。
そして、ゆっくりと目を伏せる。
えっ……これ……こんな
嬉しい事ある?
こんなに、幸せな気持ちになれることある?
理央君……こんなのずるいよ……。
ドキドキが止まんなくなる。
「ずるいよ……理央君。」
私は小さな声で呟いた。
「そんな言い方されたら、」
「断れなくなるじゃん。」
俺の胸は熱くなる。
「じゃ、来てくれる?」
恐る恐る聞くと、
琴音ちゃんは少し間を置いてから、
コクリと頷いた。
「うん。」
「一緒に行く。」
胸の奥で何かが弾けた。
夕暮れの公園で俺は、
こんなにも花火大会が来るのを
待ち遠しいと思った。


