君の事好きになっても良いですか


夕方のコンビニ。
飲み物とお菓子を買いに入った時、
入口の横に貼られているポスターが
目に入った。

”東中園 花火大会 8月5日”
琴音ちゃんが住む街の名前が真っ先に
目に飛び込む。

浴衣姿のシルエットと夜空に咲く大きな
花火を写し出してるそのポスターを
見た瞬間、胸が熱くなる。

「琴音ちゃんと二人で見たい……。」

自然と言葉に出てしまう。

願望でもなく、何となくでもなく、
胸がきゅっとなるようなハッキリした
気持ちだった。


もし、花火大会に一緒に行けたら
人混みの中で2人の距離が近付いたら?
夜空に花火が咲く瞬間、琴音ちゃんの
横顔を独り占めできたら……。
琴音ちゃんの地元の夜空に咲く
花火を琴音ちゃんと一緒に見たい。



家に帰ってスマホを握りしめて
スマホの画面と睨めっこをしている。
talkの個人メッセージを打っては消して
、また打つ。


”花火大会一緒に行こう”

その一言送れば良いのに……
送れない……。


琴音ちゃんの地元だからこそ、
一歩踏み込みすぎるのではないかと
不安がよぎる。

結局、送ったのは……


”今日夕方、予定空いてたら会えない?”
”話したい事がある。”

会って直接花火大会一緒に行きたいと
伝えたくなった俺は、
そう送った。

送信ボタンを押した瞬間に、
心拍数が爆上がりしてしまう。
だけど同時に、ほんの少しだけ息が軽くなった。


俺は琴音ちゃんの住む街、東中園の
夜空に咲く花火の下で、
自分の気持ちを届けると心に決めた。





昼下がりの部屋は静かだった。
カーテン越しに入る光が床にゆらゆらと
揺れている。

今日はバイトも休みで特に予定もない。
お母さんは夜勤明けで寝室で寝ている。

私は、ベッドに寝転びながら天井を
見つめていた。
するとまた、晃の言葉が頭に浮かぶ。

”幼なじみじゃなく1人の男として”
”見てほしい”

急かされなかった事が、逆に重たく感じた。
考える時間をもらったはずなのに、
応えは見つからない……。

そんな時、スマホが小さく揺れた。
画面を見ると心臓がドクンと脈打つ。
”理央君”と表示された画面を
見るだけで私の心臓が変になる。

理央からのtalkメッセージ

”今日、夕方少し会えないかな?”
”話したい事がある。”

短い文書なのに、どうしてこんなにも
胸がジーンと熱くなるのだろう。

晃の告白を思い出してたはずなのに
名前を見ただけで、一瞬で心が
持っていかれる。
もう、重症なのかもしれない。

指先が少し震える……。
画面を閉じようとして、またやめて、
そしてまた見る。

”話したい事がある”

その一言が、頭の中出何度も繰り返された。

なんだろ……?
何かの誘い?それともただの雑談?
それとも夏奈ちゃんの事の相談?


そう思った瞬間、胸がチクリと痛むのが
わかった。

私、とうとう理央君に相談される立ち位置
になったのかな……。

それだったら期待してはいけない……。
そう言い聞かせるほど苦しい……。

それでも会いたい気持ちは変えられず、
理央君が誰を好きでも、理央君が
悩んでいるのなら話を聞いてあげたい。