君の事好きになっても良いですか

琴音ちゃんは布団中で微熱のせいか、
ほわっとした顔で俺を見上げてくる。

「理央君……一緒にご飯嬉しい。」

もう!やばいって……今日こんなに
ドキドキするなんて思ってもいなかった。
これ、本当に期待しちゃって良いのか?
こんなのもう……俺に好意持ってるって
勘違いしてしまうよ。

俺は自然と琴音ちゃんの頭をそっと
撫でた。



理央君がそっと私に近付き、
布団の上から、微熱で火照った私の
頭を優しく撫でてくれた。

その瞬間、胸の奥がふわふわと温かくなり
呼吸が少しだけ震えた。
今日の私熱のせいなのか、めっちゃ
積極的に理央君に甘えてしまってる。
こんなの普通に戻った時めちゃくちゃ
恥ずかしいよ……。
だけど……今だけ理央君を独占したい。


私の額にかかる髪を指先でそっと
払われ、一気に私の心臓の鼓動は
早くなる。
熱のせいなんかじゃない……
私、理央君の事相当好きで
今、身体中が熱くなってるんだ。


「大丈夫?」
「まだしんどい?」


「ううん、もうだいぶん楽だよ。」
「ありがとう。」
「理央君に触れられると安心する。」

弱くて、恥ずかしくて、
でも本音すぎる言葉が勝手に口から出て
しまった。
今日の私、なんか無敵なような気がする。


理央君の手が一瞬止まったのがわかる。
でも、すぐに今度はもっとゆっくり
頭を撫でてくれた。


「なら良かった……」
「少しでも楽になるのなら」
「いくらでも撫でるよ。」


その言葉が、あまりにも優しくて
布団の中で胸がぎゅーっと締め付けられる。


「り……理央君……ありがとう。」

理央君は、少し照れたように俯きながら
それでも私から手を離さなかった。


「俺も、今日琴音ちゃん」
「家に来れて良かったよ。」
「琴音ちゃんがあんなに熱出して」
「ひとりなんて、心配で気が気じゃなかった。」


その言い方が、
まるで”特別”みたいで勘違いしてしまいそう
になってしまう。




琴音ちゃんとしばらく見つめ合う感じに
なってしまう……。
もう駄目……このまま、キスしたくなって
しまう。
もう限界!
っと思ったすぐに琴音ちゃんのお母さんが
ドアをノックしてきた。


「琴音、理央君」
「ご飯出来たわよ。」

琴音ちゃんのお母さんに呼ばれ、
俺は琴音ちゃんの体を支えたまま
ふと顔を上げると、微熱で赤くなってる
琴音ちゃんの頬がほんの数センチの
距離にあった。


「……理央君……」


琴音ちゃんの瞳がまっすぐ、
自分を見てくる。
微熱で目が潤んで……いつもより
無防備で……。
やっ……やばい!この距離……無理。

もう、理性が危うくなる。
このまま見ていたら確実に唇に触れてしまう。

琴音ちゃんに触れたい……キスしたい。
そんな衝動が喉まで熱く込み上げてくる。

ガチャっとドアが開く音が聞こえた。
琴音ちゃんのお母さんがドアを
開けた。


「ご飯よ。」
「冷めない内に食べましょ。」


「あっ、はい!」


……あっ……危なかったー。
今のは本気でキスする寸前だった。

自分の中の高鳴りを誤魔化すように
大きく深呼吸して息を吐いた。


「いっ……行こっか。」
「お母さん、待ってるみたいだし。」

できるだけ落ち着いた声を出すけど、
まだ、鼓動は早いままだった。

「うっ……うん。」


「気をつけて……ゆっくりね。」


俺は琴音ちゃんを支えながら、
部屋を出る。
さっきまでの危うい空気が、
まだ僅かに2人の間に残ったまま。



琴音ちゃんをゆっくりダイニングテーブルの
椅子に座られせる。
琴音ちゃんのお母さんは、
エプロン姿のまま振り返り言葉を発した。


「あら、理央君いたり尽くせり」
「してもらってありがとうね。」


「いっ!いえ!全然。」
「俺が勝手にし……て……る事なんで。」


噛みそうになるのを必死で誤魔化す。
さっきまで琴音ちゃんと、見つめ合って
たなんて言える訳がない。

琴音ちゃんのお母さんは、
ニッコリと微笑みながら、お皿を並べて
いく。


「遠慮しないでね。」
「こんなに助けてもらったのだから」
「晩御飯くらいご馳走しなきゃ。」



俺は横に座ってる琴音ちやんの横顔を見る。
すると琴音ちゃんは優しい笑みを浮かべて
いた。

かっ……可愛い……もうズルい……。



「琴音、無理して食べ過ぎないように。」


「うん、理央君がお粥作ってくれた」
「お粥美味しかったから」
「つい、お粥食べ過ぎちゃったから」
「食べ過ぎないようにする。」


「えっ!?」
「いや……あの……ネット検索して」
「レシピ通りに作っただけだよ。」


焦る俺を琴音ちゃんのお母さんは見て、
小さく笑った。

「ふふふ」
「なんだか初々しいわね。」


「おっ!お母さん////!」

琴音ちゃんは顔を赤くして、照れている。
俺も、琴音ちゃんとら一緒のように
顔赤く染めているのが、鏡見なくても
わかった。


こうして楽しくご飯を頂き、
楽しい時間はあっという間に過ぎた。



帰る時間

「理央君、今日は本当にありがとうね。」

玄関まで見送りに来てくれた、
琴音ちゃんのお母さんが頭を下げる。


「いっ……いえ!」
「こちらこそ夜ご飯までご馳走に」
「なってしまいすみません。」
「ありがとうございました。」


靴を履き終わり、頭を下げて俺は
今日のお礼を言った。
すると、琴音ちゃんのお母さんは
意味ありげに微笑んで、
琴音ちゃんに言う。


「琴音、あまり長く理央君を」
「引き止めちゃ駄目よ?」

そう言って琴音ちゃんのお母さんは
キッチンへと戻っていった。

玄関には俺と琴音ちゃんだけが残った。


「今日は本当にありがとう。」
「来てくれて本当に嬉しかった。」
「いっぱい看病してくれてありがとう。」


「いや、むしろ本当……来て良かった。」
「ひとりで倒れてたら危なかったし。」


「風邪、早く治すね。」


「うん。」
「あと1週間したら海も行くから」
「元気な琴音ちゃんの顔見せてね。」


「わかった。」


「じゃ、俺はこの辺で。」
「また、海で!」


「うん、また海で……おやすみ!」



ドアがゆっくり閉まりながら
琴音ちゃんの、ほのかな笑顔が
夜の玄関灯に照らされて消えた。


エレベーターで降りながら、
胸の奥がずっと温かく、
今日、俺の恋は1歩前進したと感じれた。

海……楽しみだな……。


その期待を抱えたまま
俺はゆっくり帰路についた。



第8話 1歩前進

END