君の事好きになっても良いですか?


琴音ちゃんと夏奈ちゃんが
店を出て行った後、テーブルには
私、アキ君、遥陽君の3人が残った。

気まずい空気は少し残っていたものの
私は話題を変えて話す。


「それにしても琴音ちゃん、」
「今日のバイト後に絶対疲れが出るね。」



「まぁ、あれだけ動揺してたからな。」
「まぁ、でも今日は夏奈も一緒だから」
「大丈夫だろうけど。」

そう俺が言っている横で、
晃はストローをいじりながら、
どこか落ち着かない表情をしていた。
それを千歌ちゃんがじっと見つめる。



「アキ君、大丈夫?」
「まだ引きずってるって顔してるよ?」


俺は千歌の視線から逃げ、軽く首を振った。


「いや……大丈夫。」
「あれは俺が悪かったって」
「わかってるし。」


遥陽が腕を組みながら、肯定するように
うなづいて言葉を発した。

「まぁ、反省してるなら良いよ。」
「琴音ちゃんも、理解していたし。」


俺は曖昧な笑みを浮かべると、
グラスの氷をコトリと鳴らして
席を立ち上がった。



「悪い……俺もそろそろ」
「用事あるから帰るわ。」


「アキ君もう行くの?」


「晃、琴音ちゃんの事考えすぎて」
「頭がぐるぐる迷走してるんだろ?」



「まぁ、そんなとこ。」
「今日はちょっと考え事もしたいから」
「帰るわ。」




「わかった。」
「アキ君、無理はしないでね。」
「アキ君は気持ち強く出しすぎると」
「空回りするタイプだからさ。」



「了解。」



「晃、気をつけて帰れよ。」



「遥陽、ありがとう。」



俺は軽く2人に手を振り、
店内の出口へ向かった。




アキ君の背中がみえなくたなったあと
私と遥陽君は少し無言でドリンクを
飲んでいた。

ふと私はため息を吐き、
琴音ちゃんを巡っての理央とアキ君の
事を切り出した。



「琴音ちゃん大変だよね。」
「アキ君と理央君、どっちも好かれて。」


私がそんな事を口に出すと、
遥陽君は苦笑いしながら、ストローを
くるくると回す。


「まぁな(笑)」
「あの、三角関係は……見てる側でも」
「胃が痛くなるわ(笑)」


私は、カップを置き真面目な表情になる。


「今日のアキ君、本当に焦ってたと思う。」
「琴音ちゃんの事を好きすぎて」
「空回りしているのが丸わかり。」


「理央も理央で……」
「普段、気持ち隠すの上手いのに」
「琴音ちゃんになるとダメになるし。」
「理央、琴音ちゃんを初めて電車で」
「見た瞬間、一目惚れしてたんだよ。」



「えっ?!そうなの!?」
「って事は、4月から?」



「そう。」
「だから、まさかこんなに」
「トントン拍子で接近できるなんて、」
「ましてや友達になるなんて思ってなかった」
「もんな。」
「たまたま夏奈のバイト先に琴音ちゃんが」
「来たのがきっかけって少女マンガ」
「みたいな展開だよな(笑)」



「確かに(笑)」
「本当に少女マンガみたいな展開で」
「最初、嘘かと思ったもん。」


「だよな(笑)」


「琴音ちゃんってさ、」
「あんなに天然で鈍いのに」
「よりによって2人の心を掴んじゃうん」
「だから、罪だよね(笑)」
「好き好きってバレバレだよ(笑)」




「そうだよな。」


俺は千歌ちゃんの無邪気に笑う
その自然体を見つめながら、
少しざわつく。

「好きになるタイミングなんて」
「本当誰もわからないし、」
「もう気付いたらいつの間にか好きに」
「なってるだもんな。」




「確かに(笑)」


俺は千歌ちゃんの横顔を見て、
初めて電車で感じたあの気持ちが
再びじんわり胸に広がるものを感じた。

好きになる瞬間って……
ほんと、気付いたらもう遅いんだよな。

千歌ちゃんは何の意味もわからず
俺に微笑みかけてくる。


にしても……俺、いつの間にこんなに
千歌ちゃんの事目で追っていたのだろう。
千歌ちゃんの事好きだなぁ。


「ねぇ、遥陽君。」
「私達もそろそろ帰ろっか。」


「そだな。」
「俺もそろそろ帰ろうと提案する」
「ところだった。」
「千歌ちゃん遅くなると危ないから。」


「じゃ、一緒に途中まで帰ろっか♪」



私達は店を出て、電車に揺られながら
私と遥陽君は横に並んで吊革に掴まっていた。

会話はもう落ち着いて、
車内には静かな空気が流れている。

車内のアナウンスが流れ、
私の降りる東中園駅に着いた。



「遥陽君、また明日ね!」




「おう!」
「気をつけて帰ってな!」

そう言って俺は千歌ちゃんに手を軽く
振ると、千歌ちゃんはニコッと
笑ってホームへ降りて行った。


ドアが閉まり、電車が動き出す。

千歌ちゃんの姿が遠ざかっていくのを
見ながら俺はため息を吐いた。

はぁ……俺、千歌ちゃんの事相当好きだわ。
理央の気持ちがすげぇわかるなぁ。


俺も、最寄り駅に着き家路へと向かった。