君の事好きになっても良いですか


スプラッシュコースターを
目指して人混みの中を進む時、
理央君は「こっち」と小さく言いながら、
さりげなく私の左手首を引いてくれる。
握られたんじやなくて導かれた感じ。
その曖昧さが余計に私をドキドキさせる。


俺と琴音ちゃんは、
ジェットコースターに乗る為列にならんだ。
列はゆっくり進んでいるだけなのに、
隣にいる彼女の存在だけは妙に近い。
さっきから袖がほんの少し触れて、
その度に心臓が勝手に跳ねる。
待ってる間のジェットコースターの音より、
自分の鼓動のほうがうるさい……。

こんなに緊張してるの絶対、
バレなくない……。
でも、もうちょっとこの距離を
並んでいたい。
いつも、隣りに居た晃もこんな
心境なのだろうか。

ふと、琴音ちゃんは顔をあげる。


「ねぇ、あれどのぐらい」
「落ちるんだろうね。」


その無邪気な笑顔に言葉が一瞬詰まる。
なんでこんなに楽しそうになんだ。
そんなの事されると俺の心臓本当に
持たない。


「結構高いから相当な距離で落ちそう」
「だよね……。」


そう言って俺は琴音ちゃんを見たあと
少し照れ隠しで前を向く。
これ以上視線を合わせると多分、
おれの気持ちが隠しきれなくなるから。



列がどんどん進むにつれて、
ちょっと怖くなってきた。
最初は楽しそうだなぁ私も乗ってみたいなぁ
って興味津々だったけれど、
いざ、目の当たりにすると
みんなの叫び声やジェットコースターの
音で怖くなってしまった。
そんな事を思ってると私は自然と
理央君の袖を掴んでしまい、
言ってしまった。


「理央君……ちょっとだけ不安かも。」


琴音ちゃんの仕草に、胸の奥が静かに
揺れたのを感じた。
頼ってくれるのが嬉しすぎて、
でもそれを悟られたくなくて……。

「じゃ、怖かったら」
「俺の方見てもいいよ。」


思わず俺はそんな言葉を彼女に
言ってしまった。
言った後、内心顔を覆いたくなった。
何言ってんだ……俺……これ、
ほとんど告白みたいじゃん。


私は一瞬、固まってしまった。
そして、みるみる顔が熱くなるのが
わかる。
理央君……どんなつもりで言ったのだろう。
きっと、私を怖がらないように冗談で
言ってくれたんだよきっと。
そうだって分かってても今のは
理央君ずるいよ……ドキドキが止まない。


「理央君、ありがとう///。」


「う……うん///」


なんだか気まづい空気には
なったけれど、ジェットコースターの
順番が来ていざジェットコースターに
乗ると気まづい空気も一瞬で吹っ飛んだ。
琴音ちゃんが怖いけど楽しいという
表情をしながらジェットコースターを
楽しんでいて、俺はそれを横で一緒に
味わえるだけで幸せな気持ちになる。



急停止の衝撃が体に残ったまま、
バーが上がる。
俺の耳にはまだ風の音が残っていて、
鼓動だけが妙に大きく聞こえた。



「……っ、っすごかったね!」


琴音ちゃんはそう言って笑いながら
息を整える。
その笑顔を見た瞬間胸がふわっとほどけた。

あぁ……この笑顔を見れただけで、
乗ったかいがあった。



「思ったより……叫んだよね、俺。」


そう言って理央君は私の横で、
少し照れたように頭を搔いた。


「うん、理央めっちゃ叫んでたよ♪」
「でも、それがなんか安心した。」



「安心?」



「うん、隣りに理央君がいてくれてる」
「って思ったから。」