君の事好きになっても良いですか?


湯の音が、
2人の間を埋める。

遥陽は、
2人を交互に見てから言った。

遥陽
「あのさ……、」
「どっちも本気なのは、」
「もう分かった。」

「でも、」
「琴音ちゃんが一番困るやり方は、」
「やめとけよ。」

遥陽の言葉に俺は、
眉をひそめて言う。

理央
「じゃあ、」
「どうすればいい。」

遥陽
「理央は、琴音ちゃんの」
「彼氏なんだから」
「普通にしてれば良いんだよ。」
「後は、琴音ちゃんの」
「気持ちが最優先だろ。」

「奪うとか、」
「守るとか、」
「男同士で決める話じゃない。」


遥陽がズバっと俺達に向けて言う。
その通りだと思う。

晃もそれを分かっているのか、
晃から口が開いた。


「……分かってる。」

俺も、小さく息を吐いた。

理央
「でも、俺の彼女だから」
「譲る気はない。」

遥陽
「それでいい。」

遥陽は肩をすくめた。

「ただ、2人共……」
「独りよがりになるな。」

湯気の向こうで、
2人は何も言わなかった。




──女子風呂


湯船に浸かりながら、
私達、3人はゆっくり体を温めていた。

夏奈
「……ねぇ。」
「琴音ちゃん、千歌ちゃん。」

夏奈ちゃんが、
静かに切り出す。

夏奈
「私、」
「晃君のこと、」
「諦めるって決めた。」

千歌ちゃんが、
少し驚いた顔をする。
私も、突然の宣言でびっくりして
目を大きく開いた。

千歌
「ほんとに?」


夏奈
「うん。」

夏奈ちゃんは、
お湯を見つめたまま続ける。


琴音
「でも……なんで……?」


夏奈
「好きだったし、」
「今も、」
「嫌いになったわけじゃない。」

「でも、」
「本気で人を想ってる人の顔、」
「見ちゃったから。」


琴音
「晃、そうだったんだ……。」

夏奈
「そうなんだよ。」

夏奈ちゃんは、短く答え
小さく微笑む。

「だから、」
「もう、」
「応援する側に回る。」


千歌
「……強いね。」

千歌ちゃんが言うと、
夏奈ちゃんは首を振った。

夏奈
「強くなりたいだけ」
「なのかもしれない。」

琴音は、
少し迷ってから言った。

「夏奈ちゃん、」
「話してくれて」
「ありがとう。」

夏奈
「こっちこそ」
「話し聞いてくれてありがとう。」

夏奈ちゃんは、
私の方を真っ直ぐな瞳で見てくる。
そして穏やかに微笑んで言う。

「ちゃんと晃君と、」
「向き合ってね。」


琴音
「晃と向き合う?」
「私、晃にはちゃんと理央と」
「付き合う前に私が、」
「晃に対する気持ち伝えたよ。」


夏奈
「晃君はまだ……」

晃君はまだ、琴音ちゃんの事が
好きすぎてどうしようもないんだよ。
理央から奪う覚悟があるんだよ。
って……言いそうになった。

だけど、私からそれは言う事じゃない
と分かっているから私は言葉に
するのをやめた。
私の口から言うべきではないから。
ただ……代わりに……

琴音
「夏奈ちゃん?」


夏奈
「晃君が琴音ちゃんに」
「話しある時は、真剣に聞いて」
「あげて、真剣に考えてあげてね。」


琴音
「うっ……うん。」
「分かった。」
「晃が私に何の話しがあるか」
「分からないけれど……。」
「真剣に話しも聞くし、」
「考えるよ。」


夏奈
「それなら安心。」


千歌
「夏奈ちゃん……。」
「きっと、夏奈ちゃんには」
「もっと幸せになれる時が」
「絶対に来るからね。」

夏奈
「うん、千歌ちゃんありがとう!」


私達は温泉を出たあと、
男子組と合流して、コーヒー牛乳や
アイスを休憩室で食べた。
全員が食べ終え、落ち着いた矢先に
理央が私の前に立つ。

理央
「琴音、ちょっと2人で散歩しに行こ。」


琴音
「でも、みんな居るし。」

遥陽
「琴音ちゃん、俺達の事は」
「気にしなくていいから、」
理央と行っておいで。」


千歌
「そうだよ!」
「なかなか2人きりに」
「なれなかったでしょ?」


琴音
「うん、ありがとう!」
「じゃ、行ってくる。」


理央
「みんなありがとう。」
「琴音、行こ。」