君の事好きになっても良いですか?


──旅館

夕方、
水族館を後にした私達は、
山あいに佇む旅館へと到着した。

木の香りがほのかに漂うロビー。
外の空気はひんやりしていて、
昼間の賑やかさが嘘のように静かだった。

千歌
「いいとこだね。」

千歌ちゃんが感嘆の声を漏らす。

夏奈
「木の香りが良い匂い!」
「落ち着く……。」

夏奈ちゃんも、
少し肩の力を抜いたように言う。
そして私も旅館の感想が自然に出る。

琴音
「凄い……まるでドラマの」
「世界に入ったみたい……。」
「緑に囲まれて、川に囲まれて、」
「この旅館の歴史が滲み出ている。」

私達は旅館の門を潜り、
受け付けでチェックインを済ませた。

部屋割りは、事前に決まっていた。

女子は
琴音・千歌・夏奈。

男子は
理央・晃・遥陽。

理央
「じゃ、」
「後でご飯の時に。」

理央はそう言って、
私に一瞬だけ視線を向ける。

名残惜しそうなその目に、
私は小さく笑って頷いた。



私と千歌ちゃん、夏奈ちゃんは
部屋に入ると畳の匂いと、
大きな窓から見える夜の山景色が迎えてくれた。

千歌
「広っ!」

千歌ちゃんがすぐに
畳まれてる布団にダイブする。

夏奈
「ちょっと、」
「まだ敷いてないから!」

夏奈がツッコミを入れつつ、
荷物を置く。


琴音
「あはは!」
「千歌ちゃん、子供みたい(笑)。」

そう言って私は、
窓際に立って外を見た。

今日一日、
色々あったな……
牧場では牛の乳搾りを体験したり、
美味しいソフトクリームを食べたり
美味しいランチも食べたり。

水族館は…色々あったけど、
お魚さんと、珊瑚、など
綺麗だったな……。

そんなことを考えていると、
千歌ちゃんが振り返る。


千歌
「ねぇ、」
「温泉、早く入りたい!」

琴音
「その前に、」
「ご飯だよ千歌ちゃん!」

夏奈が言うと、
三人で顔を見合わせて笑った。


夜ご飯は、
広間での和食ビュッフェ。

煮物、刺身、天ぷら、
小鉢がずらりと並ぶ。
どれも美味しそうで、
目移りしてしまう。

千歌
「旅館のご飯、」
「テンション上がるよね。」

千歌ちゃんは目を輝かせる。
千歌ちゃんのこーゆうとこが可愛い。

夏奈
「取りすぎ注意だよ(笑)。」

夏奈ちゃんはそう言いながらも、
しっかり品数は多い。

男子組と合流し、
6人でテーブルを囲む。

遥陽
「今日は歩いたな。」

遥陽君が言うと、理央は頷いた。

理央
「でも、」
「良い1日だった。」

その言葉に晃は何も言わず、
箸を進める。


食事中は、
あえて重い話は出なかった。

水族館の魚、牧場の牛、
千歌ちゃんと遥陽君のやり取り。

笑い声が、
広間に柔らかく広がる。

こうして私達は、
美味しいご飯を食べ終え
一旦部屋に戻り、
お風呂に入りに行く準備を終え、
温泉に入りに行った。



温泉は男女別に分かれる。


── 男子風呂

湯気の立ち込める中、
俺達3人は肩まで湯に浸かった。

遥陽
「……はぁ。」

遥陽が声を漏らす。

遥陽
「生き返る。」
「やっぱ、温泉は最高!」

そう言ってから少し
沈黙のあと、理央が口を開く。

理央
「……晃。」


「何?」

理央
「昼間の、」
「水族館のことだけど……。」

晃は俺が言う前に、
少し間を置いて答えた。


「悪かったと思ってる。」

理央
「謝られても、」
「納得はしてない。」