夏奈
「じゃ、決まりね。」
夏奈はそう言って、さっと踵を返す。
夏奈
「みんな何味にする?」
理央
「ミルク一択。」
琴音
「私は抹茶。」
夏奈
「千歌ちゃんは?」
千歌
「ミックス!」
夏奈
「遥陽は?」
遥陽
「じゃあ、」
「千歌と同じで。」
こうして私と晃君は売店の列に
並んだ。
列は思ったよりも長く、
牧場ランドの売店前には、
家族連れやカップルが並んでいた。
「この、人の多さはまさに」
「ゴールデンウィークだね……。」
私は前を見ながら、
ぽつりと呟く。
「だな。」
晃君は短く一言返すだけだった。
そして……沈黙。
うっ……うーん。
気まずい、というより、
何を話すべきかを
互いに探っているような間のような
感じの方が近いかもしれない。
前に進むたび、
ソフトクリームの甘い匂いが
少しずつ濃くなる。
「……ねぇ、晃君。」
私は、
意を決したように口を開く。
「ん、なに?」
俺は視線だけを向ける。
「正直に聞いてもいい?」
夏奈は真剣な目で真っ直ぐ俺を
見てくる。
「内容による。」
「逃げる前提じゃん。」
夏奈は苦笑しながら、
それでも視線を逸らさず、
ゆっくり言葉を選んで言ってきた。
「私の勘違いだったら」
「ごめんなんだけど……」
「晃君って理央から、」
「琴音ちゃんを……」
「取り返そうとしてる?」
空気が、
一瞬だけ張り詰めた。
列が再び動き出し歩いている定かに、
夏奈からのその言葉に、
俺の足が一瞬だけ止まる。
晃君はすぐに歩き出したが、
その沈黙が、
答えを探している時間だと
私には分かった。
晃君はすぐには答えず、
前を向いたまま、
少しだけ間を置いた。
なんだか……前を真っ直ぐ
向いた晃君は切ない表情を
していた。
「……取り返す、か。」
低く、噛みしめるような声。
「夏奈にはそう聞こえる?」
「最近の晃、」
「前よりずっと大胆だし。」
「距離も、」
「遠慮なくなってる。」
「そっか……やっぱり気付くよな。」
「……取り返す、じゃない。」
晃は前を見たまま、低く言った。
「奪うんだ。」
その声は、迷いがなく、
冗談でもなく、
ごまかしでもなかった。
私は思わず、息を飲んでしまった。
あまりにも晃君の迫力のある
目つきで思わず身体が硬直してしまう。
本気なんだっと言われなくとも
伝わる。
「……っ。」
「夏奈から、正直に聞いたんだろ。」
晃は続ける。
「だから、」
「正直に答える。」
また列が一歩進む。
晃君はそのまま、
言葉を止めなかった。
「理央が彼氏なのは、」
「ちゃんと分かってる。」
「今の琴音が、」
「理央を好きなのも。」
「それでも……」
「諦める理由にはならない。」
夏奈は、
胸の奥がぎゅっと締めつけられるのを感じた。
「……ひどい言い方だね。」
「分かってる。」
晃は、
自嘲するように小さく笑った。
「でも、」
「綺麗事言って、」
「何もしない方が、」
「俺には無理だった。」
「晃君……。」
「ずっと、」
「幼なじみって立場で、」
「一番近くにいた。」
「一番、」
「琴音の泣く顔も、」
「笑う顔も、」
「弱いところも見てきた。」
「それを、」
「全部知ったまま、」
「何も感じないふりはできない。」
「そう感じさせられたのは」
「この間、俺の母さんが過労で倒れて」
「救急車で運ばれた時だ。」
「あの時、理央は琴音をめっちゃくちゃ」
「になるまで喧嘩して泣かせた。」
「だから、俺は二度と琴音を諦めない。」
晃の拳が、
無意識に握られる。
「奪うって言葉使うの、」
「駄目だと思う。」
「でも、」
「それくらいの覚悟じゃないと、」
「理央には敵わない。」
夏奈は、
静かに冷静になって言う。
「……琴音ちゃんが、」
「困る可能性は?」
「傷つく可能性だってあるんだよ?」
琴音が困る……可能性……。
俺は、一瞬だけ目を伏せ
それからはっきりと答えた。
「困る可能性はある。」
「だけど、傷つけるつもりは一切ない。」
俺は即答だった。
きっと、これから俺がする
行動で琴音を悩ませてしまうかも
しれないから……。
だけど、琴音にも俺の気持ちを
わかってもらいたい。
「だから、」
「中途半端なことはしない。」
「気持ちを、」
「誤魔化したまま」
「隣にいる方が、」
「よっぽど残酷だ。」
私は、
その言葉を聞いてやっと理解した。
晃君……本気なんだ。
軽い気持ちでも、勢いでもない
ただ、覚悟を決めている。
本気で奪う気なんだ……。
「……変わらないね、晃。」
「じゃ、決まりね。」
夏奈はそう言って、さっと踵を返す。
夏奈
「みんな何味にする?」
理央
「ミルク一択。」
琴音
「私は抹茶。」
夏奈
「千歌ちゃんは?」
千歌
「ミックス!」
夏奈
「遥陽は?」
遥陽
「じゃあ、」
「千歌と同じで。」
こうして私と晃君は売店の列に
並んだ。
列は思ったよりも長く、
牧場ランドの売店前には、
家族連れやカップルが並んでいた。
「この、人の多さはまさに」
「ゴールデンウィークだね……。」
私は前を見ながら、
ぽつりと呟く。
「だな。」
晃君は短く一言返すだけだった。
そして……沈黙。
うっ……うーん。
気まずい、というより、
何を話すべきかを
互いに探っているような間のような
感じの方が近いかもしれない。
前に進むたび、
ソフトクリームの甘い匂いが
少しずつ濃くなる。
「……ねぇ、晃君。」
私は、
意を決したように口を開く。
「ん、なに?」
俺は視線だけを向ける。
「正直に聞いてもいい?」
夏奈は真剣な目で真っ直ぐ俺を
見てくる。
「内容による。」
「逃げる前提じゃん。」
夏奈は苦笑しながら、
それでも視線を逸らさず、
ゆっくり言葉を選んで言ってきた。
「私の勘違いだったら」
「ごめんなんだけど……」
「晃君って理央から、」
「琴音ちゃんを……」
「取り返そうとしてる?」
空気が、
一瞬だけ張り詰めた。
列が再び動き出し歩いている定かに、
夏奈からのその言葉に、
俺の足が一瞬だけ止まる。
晃君はすぐに歩き出したが、
その沈黙が、
答えを探している時間だと
私には分かった。
晃君はすぐには答えず、
前を向いたまま、
少しだけ間を置いた。
なんだか……前を真っ直ぐ
向いた晃君は切ない表情を
していた。
「……取り返す、か。」
低く、噛みしめるような声。
「夏奈にはそう聞こえる?」
「最近の晃、」
「前よりずっと大胆だし。」
「距離も、」
「遠慮なくなってる。」
「そっか……やっぱり気付くよな。」
「……取り返す、じゃない。」
晃は前を見たまま、低く言った。
「奪うんだ。」
その声は、迷いがなく、
冗談でもなく、
ごまかしでもなかった。
私は思わず、息を飲んでしまった。
あまりにも晃君の迫力のある
目つきで思わず身体が硬直してしまう。
本気なんだっと言われなくとも
伝わる。
「……っ。」
「夏奈から、正直に聞いたんだろ。」
晃は続ける。
「だから、」
「正直に答える。」
また列が一歩進む。
晃君はそのまま、
言葉を止めなかった。
「理央が彼氏なのは、」
「ちゃんと分かってる。」
「今の琴音が、」
「理央を好きなのも。」
「それでも……」
「諦める理由にはならない。」
夏奈は、
胸の奥がぎゅっと締めつけられるのを感じた。
「……ひどい言い方だね。」
「分かってる。」
晃は、
自嘲するように小さく笑った。
「でも、」
「綺麗事言って、」
「何もしない方が、」
「俺には無理だった。」
「晃君……。」
「ずっと、」
「幼なじみって立場で、」
「一番近くにいた。」
「一番、」
「琴音の泣く顔も、」
「笑う顔も、」
「弱いところも見てきた。」
「それを、」
「全部知ったまま、」
「何も感じないふりはできない。」
「そう感じさせられたのは」
「この間、俺の母さんが過労で倒れて」
「救急車で運ばれた時だ。」
「あの時、理央は琴音をめっちゃくちゃ」
「になるまで喧嘩して泣かせた。」
「だから、俺は二度と琴音を諦めない。」
晃の拳が、
無意識に握られる。
「奪うって言葉使うの、」
「駄目だと思う。」
「でも、」
「それくらいの覚悟じゃないと、」
「理央には敵わない。」
夏奈は、
静かに冷静になって言う。
「……琴音ちゃんが、」
「困る可能性は?」
「傷つく可能性だってあるんだよ?」
琴音が困る……可能性……。
俺は、一瞬だけ目を伏せ
それからはっきりと答えた。
「困る可能性はある。」
「だけど、傷つけるつもりは一切ない。」
俺は即答だった。
きっと、これから俺がする
行動で琴音を悩ませてしまうかも
しれないから……。
だけど、琴音にも俺の気持ちを
わかってもらいたい。
「だから、」
「中途半端なことはしない。」
「気持ちを、」
「誤魔化したまま」
「隣にいる方が、」
「よっぽど残酷だ。」
私は、
その言葉を聞いてやっと理解した。
晃君……本気なんだ。
軽い気持ちでも、勢いでもない
ただ、覚悟を決めている。
本気で奪う気なんだ……。
「……変わらないね、晃。」


