牧場ランドのゲートをくぐると、
一気に甘い匂いと草の
香りが混ざった空気が広がった。
遥陽
「うわ……広っ。」
俺は思わず声を上げて言う。
すげー!
めっちゃ綺麗な芝生が1面に
広がって北海道に来ているみたいだ。
千歌
「想像以上だね!」
千歌は嬉しそうに周囲を見回し、
自然と俺の腕に自分の腕を絡めてきた。
すると、夏奈はその行動見逃すわけでも
なく、苦笑いしながらツッコミを
入れてきた。
夏奈
「ちょっと冒頭から、」
「見せつけるのは禁止(笑)。」
夏奈が呆れたように言うと、
千歌は悪びれもせず笑う。
千歌
「えへへ///。」
「旅行だから夏奈ちゃん許して。」
遥陽
「千歌、もっとこっち来い。」
俺はそう言って、
堂々と千歌の腰に手を回した。
千歌
「遥陽ほら、あっち動物いるっぽいよ。」
そのまま恋人同士らしく歩き出す二人に、
私は小さくため息をつく。
夏奈
「……ほんと、隠す気ないよね(笑)。」
「まぁ、仲良しは良い事だけど。」
私と晃君のその少し後ろを、
理央と琴音ちゃんが並んで歩いていた。
晃君はこまめに後ろを振り向いて
2人の様子を観察している。
人混みの中、
理央は迷わないようにと、
琴音ちゃんの手をしっかり握っているのを
私も見る。
理央
「人多いな。」
琴音
「ゴールデンウィークだしね。」
理央は、
琴音の歩幅に合わせて自然と速度を落とし、
時々、肩が触れないように位置を調整する。
夏奈
「あっ……晃……」
私が晃君に話しかけようとした時……
2人の様子を、私のすぐ横で見ていた晃が、
拳を握りしめながら理央と琴音ちゃんの
所へ行ってしまった。
あっ……行ってしまった。
最近の晃君は一段と積極的に琴音ちゃんに
アプローチをかけてるように思える。
事情は理央から聞いてるから知っている。
知らないのは琴音ちゃんだけかもしれない。
晃
「完全に彼氏ムーブだな。」
理央
「何?」
「なんか文句でもあるわけ?」
理央が睨むと、
晃は気にせず琴音の反対側に来る。
晃
「琴音……」
「こっちも人いるから。」
そう言って、
琴音の背中側にそっと手を添えた。
支えるだけ。
でも距離は近い。
琴音
「晃っ!?」
「……晃、ちっ……近くない?」
晃
「転ばせないため。」
晃は即答で答える。
晃の親切心は嬉しいのだけれど、
距離が近すぎて、どう反応して
いいのかが難しい……。
それに……理央が横にいるのに……
あまりそんな事は考えないのだろうかと
私は疑問に思った。
俺は一瞬言い返しかけたが、
周囲の視線を気にして、ぐっと堪える。
理央
「……琴音、」
「嫌だったらちゃんと晃に」
「言なよ。」
琴音
「あっ……うん大丈夫。」
「別に嫌じゃないよ。」
琴音がそう答えると、
晃は満足そうに口角を上げた。
晃
「ほら、嫌じゃない。」
理央
「つっ……。」
俺と琴音、晃そのやり取りを見て、
千歌ちゃんが振り返る。
千歌
「ねぇ……」
「この三角関係……」
「見てるこっちが、」
「ドキドキするんだけど(笑)?」
夏奈
「ほんとそれ。」
夏奈は後ろから小走りで俺達の
傍に来て千歌ちゃんの言葉に
同意している。
遥陽
「お前らさぁー」
「牧場で修羅場はやめてよ?」
遥陽も千歌の横で真面目な
顔で言ってきた。
晃
「別に、修羅場じゃない。」
晃が即答すると……
理央
「牽制。」
理央もすかさず即答。
遥陽
「言い方!」
「本当、お前らは琴音ちゃんに」
「なると、容赦ないよな(笑)」
琴音
「あはは……」
琴音は、苦笑いだけして俯いた。
しばらく歩くと、
売店エリアが見えてくる。
千歌
「あっ!」
「ソフトクリーム!」
「みんな、ソフトクリームがあるよ!」
千歌ちゃんが真っ先に
ぴょんぴょんと跳ねて反応した。
千歌ちゃん可愛いなぁ。
私はそんな千歌ちゃんを見てほっこり
する。
千歌
「食べたい!」
遥陽
「俺も食べたい!」
俺は迷わず言い、
千歌の手を引く。
夏奈
「でも、既にもう……」
「結構並んでるね。」
夏奈が列を見て言うと、
一瞬の間が空いた。
その時、
夏奈は俺を見て、
少しだけ間を置いてから声をかけた。
夏奈
「ねぇ、晃君。」
晃
「ん?」
夏奈
「一緒にソフトクリーム、」
「みんなの分買いに行かない?」
夏奈が、俺を誘って来た瞬間
空気が、一瞬だけ静かになる。
なぜだか、みんなは静かになった
途端にニヤニヤとこっちを見てくる。
なんなんだよ……
しかも、琴音まで凄く満面な笑みで見てくる。
晃
「……いいけど。」
俺は短く答えた。
まぁ、夏奈1人で買いに
行かせるのはきが引ける。
6人分のソフトクリームなんて1人では
持てないしな。


