君の事好きになっても良いですか?


*琴音*


晃のお母さんの病院を
行った事がきっかけで理央と喧嘩し仲直りして
一件落着と思えたが
最近、妙に晃が私に対する接し方が
全然違う事に気付き始めた。
いつもより行動が大胆という感じがする。

理央はなんで晃がそうしているか
理由は知っているらしいが、
私には教えてくれない。

そして、私以外の千歌ちゃん・
夏奈ちゃん・遥陽君も理由に気付いてるみたい
……。
みんな……
何かを分かっているような顔をして、
でも私だけが、その輪の外にいるみたいで。

まぁ……考えても仕方ないか。

目覚ましが鳴るより少し早く、
私は目を覚ました。

カーテンの隙間から差し込む朝の光が、
やけに明るく感じる。

とうとう……今日という日が来た。

4月末になり世間は、
ゴールデンウィークに突入した。
ゴールデンウィーク二日目。
今日から一泊二日で、
みんなと旅行に行く日。

ベッドの中で一度だけ伸びをして、
すぐに体を起こす。

楽しみで、
昨夜はあまり眠れなかった。
私……子供みたい……。

それなのに、
不思議と眠気はなくて、
胸の奥がそわそわしている。

洗面所で顔を洗い、
鏡に映る自分を見る。

……ちょっと目、腫れてるかな。


寝不足のせいか、
ほんの少しだけ目元が重い。

それでも、
今日は写真もたくさん撮るだろうし、
気合いを入れなきゃ。

髪を整えながら、
ふと、晃の顔が頭に浮かぶ。

――最近、本当に晃の私への接し方が、
明らかに違う気がするんだよね。

前より距離が近いし言葉も、
視線も、どこか強い。

大胆……
という言葉が一番近い気がする。

そりゃ……去年は、晃から告白されたけど、
私は理央が好きな事伝えたし、
それでも忘れられるまで好きなままでいさせて
と言われたけど……。
……でも、私の中では幼なじみだしなぁ。

そう自分に言い聞かせる。

昔から晃は、
面倒見が良くて、
何かと世話を焼いてくれる人だった。


だから、きっとその延長。
……そう思いたい。

そう、私は旅行の準備をしながら考えていた。


準備を終えて、
バッグの中身をもう一度確認する。

財布……スマホ……
充電器……着替え……
お菓子……
よし!忘れ物なし。

玄関で靴を履こうとした、その時。

――ピンポーン

マンションのロビーからの
呼び出し音が鳴った。

……え?

千歌ちゃん?
いやいや、千歌ちゃんは今から
私が迎えに行って一緒に綾部駅に
行く約束だったはず……。


今日の集合は、綾部駅。
そこでみんなで合流し、特急はるかぜに乗って
旅行先に行くと言う流れのはず。
だから、晃も綾部駅で合流なはず。

それじゃ誰なんだろ……?

少し不思議に思いながら、
受話器を取る。


「……はい?」

「あっ……俺、おはよ。」

聞き慣れた声。

一瞬で、心臓が跳ねた。


「……晃!?」


「うん。迎えに来た。」

さらっと言われて、言葉に詰まる。


「えっ!?でも……待って!」
「集合、綾部駅だよ?」


「そんなの事知ってる。」
「でも、家出るなら一緒の方がいいだろ。」


まるで、それが当然みたいな口調。

胸の奥が、小さくざわつく。


「……私、千歌ちゃんを」
「迎えに行く約束してて……」

「じゃあ、俺も一緒に行く。」


即答なんだ……。


「心配すんな。」
「変なことしないから。」

その言い方が、逆に意識させる…。
変な事って何!?



「……わ、分かった。」
「今、降りるね。」

受話器を置いて、
深呼吸。

……なんで来たんだろ。
わざわざ電車降りてまで……

答えは、分からないまま。

エレベーターで一階へ降り、
ロビーを抜ける。

ガラス扉の向こうに、
晃はいた。

黒のパーカーに、
ラフなデニム。

手には、
小さめのボストンバッグ。

似合う……。
サラッとシンプルコーデも着こなし、
絵になる。
なんで……モテるのに私の事好きになったん
だろう。