「……私も……」
「理央が、好き……」
「大好き……。」
二人の距離が、
自然に近づいた。
俺はゆっくりと琴音の顔を包み、
額にそっとキスをする。
確かめるような、
優しいキス。
次は……頬。
そして短く、唇に触れる。
何度も……
急がず、繰り返す。
”大丈夫”
”俺はここにいるよ”
そう言葉にする代わりに、
キスで伝える。
琴音は、ぎゅっと俺の服を掴む。
離れないで、と言うみたいに。
「……仲直り、な。」
「……うん……」
小さく頷いて、
琴音は俺に笑顔を見せた。
そしてまた、そっとキスを交わす。
何度も……何度でも。
確かめ合うように。
取り戻すように。
リビングには、もう涙の気配はなく。
ただ、
寄り添う二人の温度だけが、
静かに残っていた。
──晃の宣戦布告
琴音のマンションを後にし、
理央が自宅に戻った頃には、
空はすっかり夜の色に染まっていた。
玄関のドアを閉め、
靴を脱いだ瞬間。
身体中に、
一気に疲れが押し寄せる。
それでも――
胸の奥には、
確かな温かさが残っていた。
……ちゃんと、琴音と仲直りできて
関係が戻れた。
家には既に母さんが帰ってきてた。
「理央、おかえり。」
「ただいま。」
「ご飯はどうする?」
「後で食べる。」
そう言って、俺は自分の部屋に戻る。
自分の部屋のソファーに腰を下ろし、
スマホを手に取る。
画面に映る名前。
《晃》
迷いは、もうない。
理央は深く息を吸い、
通話ボタンを押した。
数コールの後、
低く、落ち着いた声が響く。
「……どうした。」
その声に、
理央は一瞬だけ言葉を選ぶ。
そして、はっきりと告げた。
「琴音と、仲直りした。」
短く、でも揺れのない声。
電話の向こうで、
ほんの一瞬、沈黙が落ちる。
晃は、すぐには返事をしなかった。
息を吐く音だけが、
微かに聞こえる。
「……そうか。」
静かな声……怒りも、皮肉もない。
ただ、事実を受け取る音だった。
「まぁ……」
「仲直りできたなら、」
「良かったんじゃねぇの。」
その言葉に、理央の肩から、
ほんの少し力が抜ける。
「……ああ。」
「俺が悪かった。」
「ちゃんと、琴音と、話したから。」
「そうか。」
「泣かせた分、」
「これからは、」
「ちゃんと向き合う。」
その言葉を、
晃は黙って聞いている。
遮らない。
だからこそ、次に来る言葉を
理央は直感的に悟った。


