君の事好きになっても良いですか?


俺は、晃の手を振りほどいた。

「俺は、逃げない。」
「曖昧にしないって決めた。」

視線を逸らさず、言葉を続ける。

「琴音と、ちゃんと向き合う。」
「だから、」
「晃は……手を出すな。」

その言葉は、
懇願に近かったのかもしれない。

晃は、しばらく黙って聞いて俺を見ていた。

数秒の沈黙が、重く落ちる。

晃はゆっくりと目を伏せ、
小さく息を吐いた。

そして――
顔を上げた。

その表情は、
さっきまでの怒りとも、諦めとも違った。

静かで、でも、覚悟を決めた目だった。
やな予感しかない……。


「琴音の事曖昧にせず向き合う」
「と言うのは分かった。」
「だけど……悪いけど。」

低い声。

「もう……無理だ。」

その一言で、
空気が凍りついた。


「……は?」

思わず、声が漏れる。

晃は一歩、前に出る。

距離が、再び詰まる。


「琴音の事手を出すなって言われて、」
「はいそうですかって引けるなら、」
「俺は、ここに今日来てないんだよ。」

俺の胸が、嫌な意味でどくんと鳴る。


「今日な、」
「琴音の家で、あいつ見てきた。」

声は荒げないけれどなんだろ……
言葉が一語一語が重い。

「あいつ……自分が悪いのか分からなくて、」
「ずっと、自分責めてた。」

「泣くの我慢して、」
「でも、我慢できなくて、」
「それでも理央のこと、」
「嫌いだなんて一言も言わなかった。」


俺の拳が、
わずかに震えるのが自分の身体
全身で伝わってくる。

理央に向けて発言してる言葉に
俺がどれだけ、感情を出して
喋ってるかきっと理央も気付いてる
はずだろう。


「そんな状態の琴音を見て、」
「何もしないで帰れると思うか?」


「……それでもだ。」

理央は、歯を食いしばっていた。


「それは俺の彼女だ。」
「俺が向き合う。」
「晃が割り込む理由はない。」

そうだ……そうなんだよ。
琴音は俺の彼女なんだ…。
大好きなんだよ。

初めて好きになった子なんだよ。
ずっと一緒にいたいんだ。
そんな事を心の中で叫んでいたら、
晃が口を動かした。


「理由なら、ある。」

即答だった。

「言われなくても知ってると思うが……」
「俺は、今も琴音が好きだ。」

空気が、
さらに張り詰める。


「ずっとだ。」
「諦めたつもりでも、」
「忘れようとしても、」
「結局、あいつが泣いてたら、」
「俺は放っとけない。」

晃は、俺を真正面から見据えた。


「理央。」
「お前が琴音を想ってるのは分かる。」
「でもな――」
「今のお前……」
「琴音を守ってるつもりで、」
「自分の意地を守ってるだけに見える。」


晃その言葉が、理央の胸を強く打った。



「……っ!」

反論しようとして、言葉が詰まる。

図星だったんだ……。

折れないと決めたのは、
確かに――
自分のためでもあった。


「だから俺は、」
「もう“手を出さない”なんて約束はしない。」

そう言って、
晃は再び理央の胸ぐらを掴んだ。

力は強いが、乱暴じゃない。

覚悟を伝えるための手。