──神谷崎高校
神谷崎高校の教室は、
少し乾いた空気が流れていた。
俺は、自分の席に座り
机に肘をついている。
目の前の景色は見えているようで、
何も入ってこない。
今日は全てが灰色の澱んだ世界に
見えた。
遥陽
「……なあ。」
遥陽が、小声で話しかける。
遥陽
「理央昨日……寝れた?」
理央は、一瞬だけ目を伏せた。
理央
「別に……。」
「なんで……?」
遥陽
「何でっ……お前の目のクマ」
「結構酷いぞ。」
理央
「別に、気にしてない。」
そう言って俺は自分の耳たぶを触る。
俺は短い返事で返した。
今、全然気分が上がらない。
その原因は明らかに、
琴音と喧嘩したからで……。
私は、理央と遥陽の会話聞いて
小さく息をつく。
――嘘。
気にしてないなんて……
絶対気にしてるくせに。
理央が嘘つく時、
必ず右耳たぶを触る癖がある。
ちゃんと眠れていないに決まってる。
夏奈
「琴音ちゃん……大丈夫かな。」
夏奈が、ぽつりと言う。
その名前に、俺の胸が、
ぎゅーっと締めつけられる。
夏奈
「遥陽……千歌ちゃんから」
「琴音ちゃんの体調の事で」
「なんか進呈あったか連絡来てない?」
遥陽
「今朝は、特に連絡ないな。」
遥陽が答える。
琴音から連絡が来ないのは、
俺のせいだ。
きっと……体調悪いのも
俺との喧嘩が原因なんだと思う。
分かっている。
でも、折れないと決めた。
ここで揺らいだら、
自分の気持ちまで、
なかったことになる。
私は、
きっと理央は今、琴音ちゃんの事で
いっぱい考えて、悩んでるのだと思う。
そんな理央の横顔を見ながら、
心の中で思う。
理央は強がってるだけなんじゃ
ないかって……。
2人の問題だから、
あまり、私達が口走って言うのは
違うのだけど……
あまり長引きすぎると、
上手くいく事も余計拗れて上手くいかなく
なるのじゃないかな。
俺は、
理央と琴音ちゃんの喧嘩の
空気を感じながら、苦い表情を浮かべる。
これ……長引くやつだ。
そう思ったと同時に
授業開始のチャイム。
三人は、
それぞれの席に戻る。
同じ時間、違う場所で。
それぞれが、
同じ名前を胸に抱えたまま、
月曜日の午前は進んでいった。


