君の事好きになっても良いですか?


授業が始まっても、
俺の意識は、ほとんど教室にいなかった。

黒板の文字が、
視界に入っても、
意味として頭に残らない。

ノートを開いているのに、
ペンは止まったまま。

今日の俺は重症なのかもしれない……。

「……篠崎」

先生の声で、はっと顔を上げる。


「今の説明、分かるか?」


「……すみません」

教室に、小さなどよめき。


アキ君……。
琴音ちゃんの体調不良と理央君の
事でだいぶん精神的にきてる……。
本当……大丈夫かな。


俺……、一体どうしたんだ……。
こんなの、初めてだ。


琴音が元気でいるか。
ちゃんと食べているか。
一人で泣いていないか。

考えないようにしても、
考えてしまう。

スマホを取り出したい衝動を、
何度も堪えた。

今、連絡したら、余計な負担になる。

そう分かっているのに、
胸の奥が、ずっとざわついている。
琴音に会いたい……。


人生で一番、時計の針がやけに遅く感じた。


チャイムが鳴り、
昼休み。


俺は、売店でパンを一つだけ買い、
教室の自分の席に戻り、
パンを頬張った。
味は、ほとんど分からなかった。


周りでは、
楽しそうな会話が飛び交っている。


どうしてみんな、普通なんだ。

俺は、パンを食べ終え
立ち上がった。

もう、座っていられなかった。



お昼休み、友達と弁当を食べてる
千歌の席に行く。


「千歌、俺早退するわ。」



千歌
「えっ!?」
「アキ君、なんで!?」

って私はアキ君に返したけれど、
きっと答えるのは1つの理由なんだと思う。



「琴音の家に行く。」


千歌
「やっぱりね。」
「わかった、でもあまり刺激に」
「なるような事は避けてね。」
「琴音ちゃんが今辛いんだから。」



「わかった。」

そう言って俺はスクールバッグを
手に取り、職員室へ向かった。



「篠崎どーした?」


担任の先生が、目を開きながら
言う。
きっと珍しかったのだろう。
初めて職員室にわざわざ出向いた
事が。


「先生俺……早退する。」
「頭痛が酷くなってきて……。」


「そうか、わかった。」
「今日はゆっくり休め。」


担任に告げ、
静かに教室を出る。

そして校舎を出た瞬間、
胸の中の迷いが、一つに固まった。

”琴音のところへ行く”

それが正しいかどうかより、
今は、行かずにいられなかった。

駅へ向かう足取りは、
自然と速くなる。

不安と焦りを抱えたまま、
俺は、琴音のマンションへ向かった。