その言葉に、誰も返せないまま
電車は、岸駅に到着する。
ドアが開き、人の流れの中に、
アキ君が乗ってくる。
車内に入るなり、
アキ君は周囲を見渡した。
晃
「……琴音は?」
真っ先に出た名前……
やっぱりアキ君の中で1番は琴音ちゃん
なんだよね。
遥陽が、答える。
遥陽
「今日、体調悪くて学校休むって。」
「千歌の方連絡来たみたい。」
アキ君の表情が、
一瞬だけ強張る。
晃
「……そうか。」
夏奈ちゃんが、
アキ君に言葉を続ける。
夏奈
「お母さん、大丈夫なの?」
私も琴音ちゃんも心配だけど、
アキ君の事も心配だから言う。
千歌
「入院したって理央君から聞いたよ。」
理央君は黙ったままで、
俯いていた。
そしてアキ君は
息を整えてから話し始めた。
晃
「過労だった。」
「3日間は安静で入院してる。」
「明日、退院する予定。」
俺は言葉を選びながら続ける。
晃
「土曜日……」
「母さんの仕事先から連絡が入って」
「俺が一人で病院向かってて……」
「琴音も病院に来てくれた。」
その瞬間。
理央
「……良かったな。」
「そりゃ、琴音に電話で話ししたら」
「琴音なら、行くよ。」
理央の低い声。
棘を含んだ言い方。
理央
「……良かったな。」
「好きな琴音が、」
「傍にいてくれてさ。」
「わざわざ、俺とのデートを」
「中断してまで行ったんだよ。」
言ってしまった。
空気が、一気に張りつめる。
俺の心がどんどん汚れてしまう。
晃の視線が、鋭くなる。
晃
「理央……お前。」
今まで見たことない晃の表情は
明らかに怒った顔と声だった。
晃
「それ、言う必要あるか?」
理央は、視線を合わせない。
理央
「でも、事実だろ?」
遥陽が、慌てて割って入る。
遥陽
「おい、2人共やめろって!」
俺と晃の間に遥陽が入り止めた。
少し沈黙が続き、再び遥陽は
言葉を話す。
遥陽
「……なぁ、晃。」
遥陽は、苦しそうに続けた。
遥陽
「理央と琴音ちゃん、」
「今、喧嘩してるんだ。」
俺は遥陽その言葉を聞いた瞬間……
晃
「……え?」
俺の顔から、
血の気が引くのを感じた。
言葉を探した、その時……
「白鷺、白鷺です。」
車内アナウンス。
ドアが開く。


