──電車内
朝の電車は、
いつもと同じ時間、同じ車両。
理央、私、遥陽は、
すでに千歌ちゃんと琴音ちゃんと合流する
東中園駅より三駅前の綾部駅から乗っていた。
車内はそこそこ混んでいて、
3人は並んで立っている。
会話は、ほとんどなかった。
理央は、吊革を掴んだまま、
窓の外をじっと見ている。
私と遥陽は、
何度か顔を見合わせたが、
結局、声はかけられなかった。
なんかそんな雰囲気でもなく、
少しどよんとしていた。
原因はいつもと何か違う理央を
見ているからである。
電車が、東中園駅に到着する。
ドアが開き、人の流れの中に、
千歌ちゃんの姿が見えた。
千歌ちゃんは、
私達をを見つけると、
小さく会釈して乗り込んでくる。
合流した瞬間、
夏奈が周囲を見回した。
夏奈
「……あれ?」
「琴音ちゃんは?」
その一言に、
千歌ちゃんの表情が、
ほんの一瞬だけ曇る。
「今日、琴音ちゃん。」
「体調悪くて学校休むって」
「が連絡来たの。」
遥陽
「えっ!」
遥陽が、
思わず声を上げる。
遥陽
「珍しいよな。」
「大丈夫なのかな……」
私も、心配でつい眉を寄せた。
その間も、理央は黙ったまま。
視線は、床の一点に落ちている。
電車が走り出し、
レールの音が、一定のリズムで続く。
夏奈
「ねえ、……理央。」
理央
「何……?」
夏奈
「琴音ちゃんが体調悪い理由、」
「何か知ってる?」
その質問に、理央の肩がわずかに揺れた。
少しの沈黙の後、低い声で答えた。
理央
「……知ってるよ。」
「多分俺のせいだと思う。」
俺は顔を上げないまま淡々と説明をする。
理央
「2日前の土曜日デートの時……」
「急に、晃から琴音に電話が来た。」
理央の声は、
感情を抑え込んだように、
平坦だった。
理央
「晃の母さんが倒れたって。」
「それで琴音は病院に行った。」
遥陽
「それは……」
「仕方ないよな……緊急事態だし。」
理央
「そう……。」
理央は、
すぐには否定しなかった。
理央
「分かってる。」
「仕方ないって分かってるけど……。」
俺は言いかけた言葉を言わずに、
次に話しを進めた。
理央
「その夜、電話して……」
「ちょっと色々あって喧嘩になった。」
夏奈が、静かに息を呑む。
夏奈
「……で?」
理央
「今回、俺は折れない。」
はっきりとみんなの前で言い切った。
理央
「曖昧にしたくないから。」


