君の事好きになっても良いですか?

*琴音*

──琴音帰宅


玄関のドアを閉めた瞬間、
部屋の静けさが、どっと押し寄せた。
今日はお母さん、夜勤だから
家には誰も居ない。

靴を脱ぎ、電気をつける。

見慣れた自分の部屋。
なのに、
今日は少しだけ、広く感じた。

バッグを床に置き、
ベッドに腰を下ろす。


――理央に、連絡しなきゃ。


病院から帰る時、
すぐ電話をしようと思っていたのに、
気持ちが落ち着くまで、
ほんの少し時間が必要だった。


スマホを握る指に、
わずかな迷いが混じる。

それでも、画面をタップして、
通話ボタンを押した。

数回のコール音。

「……もしもし?」

聞き慣れた声。
だけど気のせいだろうか
いつもより少し、低い声。


「理央……」

声を聞いた途端、
張りつめていたものが、
ふっと緩む。

「遅くなってごめんね。」
「病院からさっき帰ってきて……」


説明しようとした、その途中で……


「晃と一緒だったんだよな?」


遮るように、理央の声が被さった。

私は、
一瞬、言葉に詰まる。
あれ……?
理央……なんか怒ってる……?

「……うん。」
「晃のお父さんも途中から」
「一緒で……」


「二人きりじゃない、って言いたいの?」


声の温度が、一段と下がった。


「違う、そうじゃなくて……」


「デートの途中で抜けてまで」
「行く必要あった?」


私の胸が、きゅっと縮む。

「理央、あれは……」
「お母さんが倒れたって聞いて、」
「晃、すごく不安そうで……」
「理央にもちゃんと説明したよ?」
「行って良いよって言ってくれたんじゃん。」


「だからって……」
「晃のところに行くのは当たり前?」


理央の言葉が、鋭くなっていく。

琴音は、スマホを持つ手に力を込めた。


「理央は、私が誰を好きか」
「分かってるでしょ?」


「……分かってるよ!!」


即答だった。

でも、続く声は、
どこか刺々しい。


「分かってるけどさ……」
「晃の前だと……。」
「琴音、無防備すぎるんだよ。」


その一言に、胸の奥がざわりと波立つ。
なんで……そんな事言うの……?
私は泣きそうなのを必死に押し殺す
の精一杯だった。


「……それ、どういう意味?」