会計を済ませて、
休憩広場に移動すると理央が小さい
ショップ袋を私に渡してきた。
「琴音、ほらこれ。」
「……え?」
「それ、欲しそうだったから。」
渡された袋の中身を見ると、
さっき私が買おうか悩んだ結果諦めた
スカーレットのアクリルスタンドだった。
「ありがとう!めっちゃ嬉しい!」
「どういたしまして!」
気取らない声。
でも、その何気なさが好きだった。
コラボカフェでは、
二人並んで同じメニューを頼んで、
写真を撮って、
”冷める前に食べよ”と笑い合う。
凄く幸せな時間。
こんな時間がずっと続いて欲しいなぁ。
「琴音、口……。」
「え?」
私が、ポカーンとしていると
理央が自分の口元を指差して、
私が慌てて自分の口を拭くと、
「違う、こっち……。」
そう言って、理央は向かい合って座って
いたところを前のめりになって私に
近付き理央の指で、私の口元に付いていて
ソースを拭き取り、ペロッと理央の口に
入っていた。
「……もう」
「油断しすぎ。」
理央は、少し色気のある声で言った。
私の心臓がもうスピードでうるさくなる。
こっ……これは心臓に悪いよ……。
身体、全身が火照ってしまいそう。
本当に……こんな時間が、
ずっと続けばいいのに――
心のどこかで、そう思っていた。
「琴音、この後さ……」
「近くに小さい公園あるらしいんだ」
「行こ?」
理央の声は、穏やかで、
未来を疑っていなかった。
私達はイベント会場を出て、
公園に向かう途中……
その瞬間だった。
私のポケットの中でスマホが震えた。
ポケットから取り出し、
画面に映った名前を見た瞬間、
胸がひゅっと縮む。
晃……?
「晃から……。」
「……出ていいよ。」
理央はすぐにそう言って、
下を向く。
通話ボタンを押した瞬間、
耳に飛び込んできたのは、
聞いたことのない晃の声だった。
『琴音……っ!』
息が荒く、
言葉が途中で途切れる。
晃がだいぶん錯乱している。
今までにない焦りが、
電話越しから伝わってきた?
『母さんが……母さんが……』
「晃……ちょっと深呼吸して、」
「落ち着いてゆっくりでいいから。」
『母さんが!……仕事先で倒れて……』
『今、病院に運ばれてる……』
頭が一気に真っ白になる。
えっ……なんて……
聞き間違いじゃないよね……?
晃のお母さん倒れたって……
そんな……。
『俺、今一人で向かってる……』
『どうしたらいいか……分からなくて……』
「……どこの病院?」
「すぐ行くから!」
電話を切ったあと、私は理央を見た。
「理央……ごめん。」
「晃のお母さんが仕事先で急に倒れて……」
「今、救急搬送されてて……。」
言い終わる前に、理央は一度、目を伏せた。
「行ってきな」
「俺は大丈夫だから。」
「心配なんだろ……?」
「晃の事も、晃のお母さんの事も。」
その言葉が、とても優しくて……
だからこそ胸に刺さった。
「うん……すごく心配。」
「本当にごめん……」
「あとで、必ず連絡する。」
「うん……わかった。」
そう言って笑った理央の表情を、
私はこの時、深く見てなかった。
休憩広場に移動すると理央が小さい
ショップ袋を私に渡してきた。
「琴音、ほらこれ。」
「……え?」
「それ、欲しそうだったから。」
渡された袋の中身を見ると、
さっき私が買おうか悩んだ結果諦めた
スカーレットのアクリルスタンドだった。
「ありがとう!めっちゃ嬉しい!」
「どういたしまして!」
気取らない声。
でも、その何気なさが好きだった。
コラボカフェでは、
二人並んで同じメニューを頼んで、
写真を撮って、
”冷める前に食べよ”と笑い合う。
凄く幸せな時間。
こんな時間がずっと続いて欲しいなぁ。
「琴音、口……。」
「え?」
私が、ポカーンとしていると
理央が自分の口元を指差して、
私が慌てて自分の口を拭くと、
「違う、こっち……。」
そう言って、理央は向かい合って座って
いたところを前のめりになって私に
近付き理央の指で、私の口元に付いていて
ソースを拭き取り、ペロッと理央の口に
入っていた。
「……もう」
「油断しすぎ。」
理央は、少し色気のある声で言った。
私の心臓がもうスピードでうるさくなる。
こっ……これは心臓に悪いよ……。
身体、全身が火照ってしまいそう。
本当に……こんな時間が、
ずっと続けばいいのに――
心のどこかで、そう思っていた。
「琴音、この後さ……」
「近くに小さい公園あるらしいんだ」
「行こ?」
理央の声は、穏やかで、
未来を疑っていなかった。
私達はイベント会場を出て、
公園に向かう途中……
その瞬間だった。
私のポケットの中でスマホが震えた。
ポケットから取り出し、
画面に映った名前を見た瞬間、
胸がひゅっと縮む。
晃……?
「晃から……。」
「……出ていいよ。」
理央はすぐにそう言って、
下を向く。
通話ボタンを押した瞬間、
耳に飛び込んできたのは、
聞いたことのない晃の声だった。
『琴音……っ!』
息が荒く、
言葉が途中で途切れる。
晃がだいぶん錯乱している。
今までにない焦りが、
電話越しから伝わってきた?
『母さんが……母さんが……』
「晃……ちょっと深呼吸して、」
「落ち着いてゆっくりでいいから。」
『母さんが!……仕事先で倒れて……』
『今、病院に運ばれてる……』
頭が一気に真っ白になる。
えっ……なんて……
聞き間違いじゃないよね……?
晃のお母さん倒れたって……
そんな……。
『俺、今一人で向かってる……』
『どうしたらいいか……分からなくて……』
「……どこの病院?」
「すぐ行くから!」
電話を切ったあと、私は理央を見た。
「理央……ごめん。」
「晃のお母さんが仕事先で急に倒れて……」
「今、救急搬送されてて……。」
言い終わる前に、理央は一度、目を伏せた。
「行ってきな」
「俺は大丈夫だから。」
「心配なんだろ……?」
「晃の事も、晃のお母さんの事も。」
その言葉が、とても優しくて……
だからこそ胸に刺さった。
「うん……すごく心配。」
「本当にごめん……」
「あとで、必ず連絡する。」
「うん……わかった。」
そう言って笑った理央の表情を、
私はこの時、深く見てなかった。


