私達はすっかり長居してしまった
ファミレスを出ると、
空はすでに夕方の色に染まり始めていた。
吐く息が白く、昼よりも一段と冷え込んでいる。
私の隣りにいる千歌ちゃんが身体を縮ませて
寒そうにしている。
千歌
「さっむ……!」
「やっぱ夕方になると一気にくるね。」
遥陽
「だな。」
「じゃあ、駅で解散しよっか。」
自然な流れで、駅前に集まる。
夏奈
「今日はありがとう、みんな。」
「初詣、来てよかった。」
千歌
「うん。」
「なんかさ、今年がちゃんと始まった感じする。」
遥陽
「今年もよろしくな。」
軽い言葉だけど、
それぞれにとって意味のある一言だった。
俺は少し間を置いて、口を開く。
晃
「……俺も、来てよかった。」
一瞬だけ、全員の視線が集まる。
遥陽
「晃もそう言ってるなら」
「良かったわ。」
夏奈
「晃君。」
「今日は……ありがとう。」
晃
「……何が。」
夏奈
「一緒に、ちゃんとここにいてくれたこと。」
晃
「……ああ。」
「なんだかんだ」
「みんなと居るの楽しいからな。」
晃君は少し照れた顔を隠して言った。
もう、私はなにもワガママを言わない。
晃君が笑っていられるなら、
それだけで私は充分だと思う。
高望みはしない……
私は、私のペースで進む。
その決意は、もう揺れていなかった。
──帰り道
電車に揺られながら、
私は千歌ちゃんの隣に座っていた。
しばらく無言。
その沈黙を破ったのは、千歌だった。
千歌
「……今日さ。」
琴音
「うん?」
千歌
「正直、ちょっとヒヤヒヤした。」
琴音
「……だよね。」
千歌
「でもね。」
「琴音ちゃんが、ちゃんと自分の立ち位置を」
「分かってるのが伝わってきた。」
私は膝の上で手を握る。
琴音
「私……晃に前、忘れられるまで」
「好きのままでいさせてって」
「言われた事があって……」
「もう、てっきり晃は忘れたのかと」
「思ってたけど、今日の行動を見て」
「たら、違うんだって感じた。」
千歌
「うん。」
「明らかに、まだ琴音ちゃんの事」
「好きだと思うよ。」
「好きになるのは自由だから……」
琴音
「でも、私は理央が好き。」
「理央の隣りに居たい。」
千歌は、ふっと優しく笑った。
千歌
「それでいいんだよ。」
「琴音ちゃんの気持ちが1番だからね。」
私は、少しだけ肩の力を抜いた。
それぞれが、
違う帰り道を選びながら。
同じ一年の始まりを、胸に刻む。
交わらない想いも、
重なった時間も。
すべてを抱えたまま――
こうしてみんなで大人になれたらなぁ
と心の中で思った。
第22話 初詣
END


