夏奈
「ねぇ、琴音ちゃん。」
琴音
「夏奈ちゃんなに?」
夏奈
「誕生日の指輪、まだつけてる?」
私は無意識に左手を見る。
琴音
「うん!もちろん!」
理央
「なんで夏奈そんな事聞いてくんの?」
「外す理由なんてないだろ?」
即答。
千歌
「はいはい〜!」
「理央くんのドヤ顔出ました〜!」
遥陽
「でもさ、実際似合ってるよな。」
千歌
「うん。」
「琴音ちゃん、ほんと幸せそう。」
千歌ちゃんと遥陽君のその言葉に、
私は少し照れながら頷く。
夏奈ちゃんは、
その様子を見て、少しだけ笑った。
夏奈
「それなら……」
「……よかった。」
小さな声。
でも、それは本音だった。
俺は、千歌と付き合って思った事がある。
千歌は、空気を読むのが上手い。
誰がどこで苦しくて、
誰が無理して笑っているか。
全部、分かってる。
千歌
「ねぇねぇ。」
いつもより少しだけ真面目な声で
千歌は話を切り出した。
千歌
「今年もさ、色々あると思うんだよね。」
「喧嘩とか、すれ違いとか。」
一瞬、みんなが静かになる。
千歌
「でもさ。」
「ちゃんと話して、ちゃんと向き合えば」
「……壊れないと思うのね。」
その視線は、
理央と琴音ちゃん、そして晃にも向いていた。
理央
「……だな。」
晃
「……ああ。」
短い返事。
でも、それぞれが違う意味で受け取っている。
遥陽は、空になったグラスを見ながら言った。
遥陽
「俺さ。」
千歌を見る。
遥陽
「好きなやつが幸せそうなの、」
「正直、羨ましい時もあるけど。」
千歌
「うん?」
遥陽
「でも、それ以上に」
「隣にいられる今が一番大事だと思ってる。」
その遥陽の言葉に、
俺の胸が、少しだけ締めつけられた。
……隣り……か。
それは、
自分が選んだ立ち位置でもある。
理央は、テーブルの下で私の手を握る。
理央
「琴音。」
琴音
「?」
理央
「……俺、簡単に譲る気ないから。」
低い声。
でも、真っ直ぐ。
理央
「好きだから。」
「守りたいから。」
私は、ぎゅっと握り返す。
琴音
「……うん。」
そのやり取りを、
俺は、はっきりと見届けた。
……それでも。
それでも、俺は琴音の隣にいたい。
奪わない。壊さない。
でも――
想うことだけは、やめない。


