……完全に“彼氏の距離”だな。
理央の動きは自然で、迷いがない。
それが余計に、胸に刺さる。
俺が踏み込める隙なんて、
最初からなかったのかもしれない。
それでも――
視線は、どうしても琴音から離れなかった。
自分自身でもどうして良いのか分からなく
なる。
料理を一口食べたあと、
俺はぽつりと口を開く。
晃
「……琴音。」
名前を呼ばれて、琴音は顔を上げる。
琴音
「なに?」
晃
「さっき……寒そうだったからさ。」
「もう大丈夫かなと……。」
琴音
「うん、店の中暖かいし。」
「もう、平気だよ。」
「晃、ありがとう。」
私はそう答えて、微笑む。
その瞬間――
晃は、少しだけ安心したように息を吐いた。
晃
「……なら、よかった。」
それだけ……
触れない……近づかない。
でも、想いだけは確かにそこにある。
俺は、晃と琴音のその様子を横目で見ていた。
晃、今度は……優しさで来るか。
理央は、私の肩に軽く自分の肩を寄せる。
理央
「琴音、あとでホットドリンク頼もう。」
「冷えるとすぐ喉やられるだろ。」
琴音
「理央、覚えてるんだ。」
理央
「忘れるわけない。」
彼氏としての“当たり前”を、
一つずつ、重ねていく。
晃はその光景を見て、苦笑していた。
分かっている……理央が彼氏だって事。
それでも、俺の気持ちは止まらないんだよ。
私は、静かにその全てを見ていた。
晃君が琴音ちゃんを見る視線。
理央の独占欲と敵対心。
琴音ちゃんの戸惑いと、幸せそうな表情。
……やっぱり晃君も理央琴音ちゃんが、
好きなんだよね。
晃君が自分じゃない誰かを想っていると、
改めて突きつけられる。
でも――
胸の奥にあるのは、絶望だけじゃなかった。
それでも、好きって気持ちを
否定しないって決めた。
前に進むために。
ちゃんと、自分の足で。


