参拝を終え、
境内の少し開けた場所に全員が集まった。
千歌
「はー、並んだね。」
「人があまりにも多くてびっくり。」
千歌ちゃんは白い息を吐きながら言う。
遥陽
「こんなに多くの参拝見ると」
「やっぱり正月って感じするな。」
遥陽が寒そうに肩をすくめて言う。
私は両手を擦りながら、小さく言った。
琴音
「……ちょっと寒いかも。」
「ほんと、ふゆは苦手。」
その言葉を聞いた瞬間、
俺は無意識にポケットに入れて
いた手を握り直した。
ポケットの中のカイロでまだ、
手は温かい。
一歩、距離を詰める。
晃
「琴音。」
名前を呼ばれて、琴音が顔を上げた、その瞬間。
晃は、
再びそっと琴音の頬に手を伸ばした。
琴音
「……っ!!」
指先が触れたと同時に、
じんわりとした温もりが伝わる。
晃
「俺、カイロ握ってたから」
低い声で、近い距離で晃は言う。
晃
「……暖かいぞ。」
私は一瞬、言葉を失い、
驚いたように目を瞬かせる。
きっと私の寒がりをいちばん良く知って
くれてるから、心配してくれての行動だと
私は思い……
琴音
「……あ、ほんとだ……」
「暖かい……晃、ありがとう。」
頬が、ゆっくり赤くなる。
その空気を察して、
千歌がすぐに入った。
千歌
「ちょ、アキ君!」
「優しさが不意打ちすぎ!」
「しかもまた、頬触ってるし(笑)」
千歌ちゃんは明るく笑いながら、
私のの肩に軽く手を置く。
琴音
「ち、千歌……ちゃん。」
俺は晃が琴音に再び頬に触れた光景を見て
一瞬だけ視線を逸らし、
すぐに琴音の肩を引き寄せた。
琴音
「理央っ!?」
理央
「晃、ちょっと触れすぎ。」
「……俺の彼女だからな」
牽制とも、確認ともつかない声。
遥陽
「はいはい」
「理央、晃その辺にしとけ。」
遥陽が空気を和ませるように言う。
俺は、名残惜しそうに手を離す。
琴音の頬に……触れた。
触れた後も温もりは、
自分の指にも残っている。
晃の行動はただの気遣い。
そう言い聞かせても、
俺の胸の奥の鼓動は誤魔化せなかった。
今すぐにでも、琴音を抱き締めて
ここから2人で抜け出したい気持ちに
なってしまったのを抑える事で
俺はいっぱいいっぱいだった。
私は……
晃君と琴音ちゃんの一連を
黙って見ていた。
……やっぱり。
晃君の琴音ちゃんに対する視線も、
触れ方も、全部。
見ないふりなんて、できなかった。
晃君……琴音ちゃんの事よっぽど
好きなんだと再認識させられちゃった。
境内にはまた、
何事もなかったような笑い声が戻る。
けれどそれぞれの胸には、
小さな熱だけが、確かに残っていた。
夏奈
「ねぇ、みんな。」
「おみくじ引こ!」
理央
「賛成!」
「引かなきゃ今年始まらないもんな。」
こうしてみんなでおみくじを引き
結果を見せ合い、また笑いが起きる。
夏奈
「私、小吉!」
理央
「微妙!」
「俺は吉。」
遥陽
「理央は普通だな(笑)。」
理央
「普通って言うな(笑)」
「琴音は?どうだった?」
琴音
「私も理央と同じ、吉だよ。」
「晃は?」
琴音が俺のおみくじの結果を
聞いてくる。
晃
「俺は……末吉。」
遥陽
「一番コメント困るやつ(笑)。」
遥陽が冗談を言いながら
場を和ませながら笑う。
俺も、一緒に笑った。
……笑えるうちは、いい。
遥陽
「千歌は?」
「俺はじゃーん!」
「大吉!」
千歌
「遥陽!私も!」
遥陽
「ヤバっ嬉しすぎる。」
「おみくじも一緒だな。」
そう言って俺は、千歌を抱き締めた。
夏奈
「このバカップルめ(笑)」
理央
「本当、大胆だな(笑)。」
晃
「見ててこっちが恥ずかしくなる。」
遥陽
「だって、めっちゃ俺と千歌は」
「超ラブだしな!」
夏奈
「はいはい(笑)」
「それはそれは良かったですね(笑)。」


