君の事好きになっても良いですか?



来年も、ここにいたいなぁ。

それぞれ立場も、気持ちも違う。
でも――
今この瞬間だけは、同じ場所に立っている。
理央・晃・遥陽君・千歌ちゃん・夏奈ちゃん
このメンバーでずっと仲良くできたら
良いなぁ……。
私は改めてそう願った。



千歌
「それじゃ、参拝行こっか。」

千歌ちゃんの声で、みんなが動き出す。

冷たい空気の中、
並んで歩く背中は、少しだけ近く見えた。

今年が“最初”なら、
来年は“当たり前”になるかもしれない。

そう思いながら、
一行は賽銭箱へ向かった。




参拝の列は思ったより長く、
境内の空気は冷たいのに、
どこか落ち着いていた。
俺はダウンジャケットのポケットに
手を突っ込んだ。


千歌
「結構並ぶね。」

千歌が両手を口元に当て
白く息を吐きながら言った。
それを見た俺は心臓が熱くなる。
こと言う何気ない仕草が
愛おしいくて堪らなくなる。
だから俺は、千歌右手を繋ぎそのまま
自分のダウンジャケットのポケットに
突っ込む。
そして、さりげなく話す。


遥陽
「正月だしな。」


千歌
「遥陽のポケットの中暖かい。」





琴音は両手をこすりながら、
前を向いている。

その後ろで、俺は静かに立っていた。

……願い事か……。

毎年、
「健康」とか「平穏」とか、
無難なことしか願ってこなかった。

欲張るのはよくない。
そう思っていた。

でも——

俺の視線は、自然と琴音の背中に向かう。

マフラーの端が少し揺れて、
千歌と何か小声で話して笑っている。

琴音が……欲しい。

ふと、そんな言葉が胸に浮かんだ。


理央と付き合っている。
それは分かっている。

でも、それでも。

ただ……一緒にいたい。

幼なじみとしてでもいい。
隣で笑っていられるなら。

それでも足りないと、
自分が思っていることも、
もう分かっていた。

列が少し進む。

俺の横にいる理央が前に並んでる
琴音の肩を軽く叩いて言う。

理央
「寒くない?」

琴音
「大丈夫だよ。」
「理央は寒くない?」
「マフラー貸そっか?」


そう言って琴音は、理央にしか見せない
笑顔で答える。

そのやり取りを見て、晃は小さく息を吸った。

綺麗事は、やめよう。

神様の前でくらい、正直になってもいいだろ。

——琴音と、ずっと一緒にいたい。

ただそれだけ。

奪うとか、壊すとか、
そんな言葉は浮かばなかった。

ただ、離れたくない。

それが、俺の“欲”だった。

やがて順番が来る。

賽銭を入れ、目を閉じて手を合わせる。

周りの音が、一瞬で遠くなる。

”琴音と、ずっと一緒に居させてください。”

それは願いというより、
切実な本音だった。

目を開けると、すぐ前に琴音がいて、
俺は少しびっくりする。
そんな事は気にもせず琴音は無邪気に
笑顔を向けて言う。

琴音
「ねぇ晃、何お願いした?」

冗談みたいな軽い声。

晃は一瞬だけ迷って、いつもの調子で答える。


「……秘密。」

琴音
「秘密とか気になるじゃん!」



「絶対、教えない。」

千歌
「えー、ずるい!」

千歌が横から言う。


「そういうのは言わないもんだろ。」

そう言って笑った。

誰にも気づかれないように。
でも、自分だけは誤魔化さない。

晃は、初めて“欲の願い”をした。

これが新しい一年の始まりだった。