君の事好きになっても良いですか?


*晃*


鳥居の前。
冷たい風が頬を打つ。
今日は一段と冷え込んで、体が硬直して
しまいそうになる。

一番に着いてしまうのは、
昔から俺の癖だ。

……今年も、ここに来た。

でも、
去年までと違うのは――
琴音は、もう俺の隣に来る存在じゃない。
今までは琴音と2人で行っていた。
去年から千歌が加わって、
今年から、理央・遥陽・夏奈が加わる。

分かってる……
もう2人で並んで行けない事。

それでも、来てしまう。

遠くから、
聞き慣れた声が近づいてくる。



「アキ君!」

千歌の声がストレートに俺の
耳に入ってきて、顔を上げる。

千歌が大きく手を振り、
琴音と一緒に俺の方に近付いてきた。

――琴音。



白いマフラー、少し赤い頬。
無防備な横顔。

……可愛い……マジでなんでそんな
可愛いんだよ……。
心がどんどん奪われ、
歯止めが効かなくなる……。
胸が、勝手に疼く。


理央 side 終わり






───鷹宮神社


鳥居の前に立つ晃の姿を見つけた瞬間、
胸が少しだけ、ざわついた。

晃……

大切な幼なじみ。
だけどそれ以上の想いを、
向けられていることも私はちゃんと
知っている。

私達の後ろには、理央と夏奈ちゃんと
遥陽君も歩いていた事に気付かずに
こらから起こる事は想像もしていなかった。


琴音
「晃、おはよう。」
「今日、さっ………!」

そう声をかけた瞬間――
晃が、距離を詰めてきた。


そして……

私の右頬に、そっと触れる指。



「おはよう。」
「……今日のお前、可愛すぎ。」


一瞬、時間が止まった。

「え……?」

心臓が跳ねる……
戸惑いが隠せない……。

だめ……駄目だよ……晃。

琴音
「晃、びっくりするじゃん。」


声が少しだけ震えた。
気にしてないフリをするので
精一杯だった。



えっ!?アキ君ちょっとその行動は、
大胆すぎない?

アキ君の無意識。
琴音ちゃんの困惑。

このままじゃ、まずいよ……。

私は一歩前に出て、2人の間に自然に入る。

千歌
「はいはいアキ君!」
「何やってんの?」

わざと明るく私は言葉を出した。

千歌
「今日の琴音ちゃんが可愛いのなんて」
「新年じゃなくても通常運転だから!」

琴音ちゃんの肩に手を置いて笑いながら
言った。

千歌
「幼なじみ距離、ちょっと近すぎー」
「もうちょい考えようね!」

空気が、ふっと緩んだ。

……よし。

アキ君……まだそんな顔するんだ。
切ないよね……。
報われない想いが溢れちゃうんだよね。
アキ君も大変だなぁ。


でも、私は琴音ちゃんの親友だから……
琴音ちゃんが傷つく選択は、
絶対にさせたくない。

この場を守るのも私の役目だから。




俺と夏奈と遥陽は鳥居の前に着いた瞬間、
視界に飛び込んできた光景に思わず
立ち止まった。

――晃が、琴音の頬に触れている。

胸の奥が、ひりっとする。

距離近すぎなんだよ……
って言うか、なんで晃は琴音の頬を
触ってんの?


俺は、走って琴音の傍に駆け寄った。

夏奈
「ちょっ!」
「理央!?」


晃君の手が、
琴音ちゃんの頬に触れた瞬間。

……あっ

胸が、きゅーっと縮む。

分かってるはずなのに……

晃君の想いの先が、
ずっと琴音ちゃんだってこと。
なのに……
私、何期待してたんだろ……

千歌ちゃんが間に入ってくれて、
少しだけ、救われた気がした。

……泣かない。

泣くよりも、
ちゃんと前を向くって決めたじゃん。




……あー、なるほど。

遠目で見ても、一瞬で察する。

晃、何やってんだよ……。

でも、
千歌が即フォローに入ったのを見て、
内心ほっとした。
やっぱ俺の彼女は、機転がきいてさすがだと
思う。

助かるわ、本当に……。

俺は夏奈の事が心配になり、
ちらっと、隣を見る。

夏奈は、何も言わずにその場を見ていた。
表情は崩れてない。
でも――

見ちゃったよな…。

遥陽
「おい、夏奈大丈夫か?」


夏奈
「うん……なんとか。」
「仕方ないよ。」
「晃君は、琴音ちゃんしか」
「見えてないんだもん。」
「誰も悪くないよ。」
「私達も行こっか。」