私達はプレゼントを琴音ちゃんに
渡した後カラオケを再開し、
盛り上がった。
そしてカラオケの最後の曲が終わり、
画面に流れる採点結果を見て、
誰からともなく拍手が起こった。
千歌
「はー、歌った!」
千歌ちゃんがソファに倒れ込むように座り、
笑いながら息をつく。
千歌
「声枯れるまで歌うとは思わなかった。」
夏奈
「でも楽しかったでしょ?」
私がドリンクを飲みながら言うと、
千歌
「うん、最高!」
「それに、琴音ちゃんの歌声も」
「聴けたからめっちゃ最高!」
と千歌ちゃんは即答した。
私も、この前初めて琴音ちゃんの
歌声聴いてファンになって、
今日また、改めて聴けて本当に最高の
1日になったなぁ。
ただ、晃君が琴音ちゃんに近づくのを
見てる時は胸が傷むけれど、
それは今始まったことではないと
割り切る事にしたいた。
遥陽は時計を確認し、
少し名残惜しそうに言う。
遥陽
「そろそろ時間だな。」
その言葉に、
空気がほんの少しだけ静まった。
楽しい時間の終わり特有の、
胸の奥がきゅっとする感覚。
瑠斗
「もう終わりかぁ……。」
瑠斗君が小さく呟く。
琴音
「初参加なのに、ちゃんと溶け込んでたよ。」
私が笑顔で言うと、
瑠斗君はパァっと明るくなって
嬉しそうに私の顔を見る。
瑠斗
「琴音先輩!」
「ありがとうございます!」
瑠斗くんは少し照れながら
深く頭を下げた。
瑠斗
「今日、皆さん」
「本当にありがとうございました。」
「先輩の誕生日、前日だけど……」
「参加できて嬉しかったです。」
その言葉に、晃が静かに頷く。
晃
「また、みんなで集まろう。」
晃が言ったその一言が、
自然に全員の気持ちをつないだ。
荷物をまとめ、部屋を出る。
廊下に出た瞬間、
さっきまでの音楽が嘘みたいに遠ざかり、
現実の静けさが戻ってきた。
屋内型複合レジャー施設を
出た私達を迎えたのは、
夕方よりもぐっと冷えた空気だった。
街灯の光が夜の白鷺駅前ロータリーの
アスファルトを淡く照らし、
人の流れは少しずつ駅へと吸い込まれていく。
遥陽
「じゃ、ここで解散かな。」
遥陽君がそう言うと、
自然とそれぞれの帰り道を意識した空気になる。
晃と瑠斗君は、駅とは反対方向へ視線を向けた。
晃
「俺と瑠斗は歩きだな。」
瑠斗
「はい!」
瑠斗が少し緊張を解いたように頷く。
瑠斗
「みなさん!」
「今日はありがとうございました。」
改めて頭を下げる瑠斗君に、
千歌が笑って手を振った。
千歌
「こちらこそ。寒いから気をつけてね!」
俺は最後に、琴音を見る。
一瞬だけ、言葉を探すように
視線が揺れたが結局、
口にしたのは短い一言だった。
晃
「琴音、気をつけて帰れよ。」
「そして、誕生日おめでとう。」
前日だと分かっていても、さっきみんなで
”おめでとう”と言ったけどもう一度
言いたかった。
その言葉には確かな想いを込めて言った。
琴音
「ありがとう。」
「晃、瑠斗君も気をつけて帰ってね。」
琴音は柔らかく笑う。
二人のやり取りを、俺はすぐ隣で見ていた。
割って入ることも、視線を逸らすこともせず、
その距離ごと受け止めるように立っている。
晃はそれ以上何も言わず、瑠斗と並んで歩き出した。
二人の背中が、街灯の影の中に溶けていく。


